石川啄木に関わる資料が盛岡市に寄贈され、感謝状贈呈式が6月2日に盛岡市役所(盛岡市内丸)で行われた。
寄贈された資料は、啄木の盛岡中学校(現・盛岡第一高校)時代の後輩で親友だった小林茂雄に宛てて書いた書簡2通。それぞれ1903(明治36)年8月25日付と、1904(明治37)年1月11日付のはがきで、1903年のものは茂雄に連絡を取っていなかったことをわびる内容で、短歌一首が添えられている。書簡の内容は「石川啄木全集 第7巻」(筑摩書房)などで紹介され、既知の資料としても知られている。
茂雄は啄木と共に短歌同好会「白羊会」に参加し、「花郷」という号で短歌や俳句を作っていた。啄木の作品には茂雄や花郷の名前が登場している。資料を寄贈した小林高さんは茂雄の孫に当たる。今回の寄贈資料の他に、啄木が後の妻・節子への思いをつづった長い巻紙など啄木から届いた書簡などがあったが、小林さんの父が各所に寄贈している。少年時代の小林さんは「全て寄贈してしまい、家からなくなってしてしまうのは寂しい」と思い、2通の書簡を啄木関連の本の間に挟み、隠し持っていたという。その後、書簡を額縁に入れて家宝のように大切に自宅で飾っていた。
小林さんは、石川啄木記念館の前館長の森義真さんとの交流をきっかけに、書簡の寄贈を提案。昨年5月に現館長の藤原安生さんとつながり、現物の確認や資料調査を経て、今年4月に寄贈が決まった。
小林さんは「いずれは寄贈しなければと大切に保管してきた。やっと渡すことができてほっとした。祖父と啄木の交流を知り、幼い頃から啄木には親戚のような親しみを持ってきた。多くの人の目に触れる機会があれば喜ばしい。この資料を次世代につなげてもらえたら」と話す。
2日には小林さんが市役所を訪れ、内舘茂市長から感謝状を受け取った。「資料の写真を見てから、実物を見たかった」と内舘市長。実物の書簡を見て「かわいらしく読みやすい字。貴重な資料として今後役立てたい」と感謝を伝えた。
今年は啄木生誕140周年の記念の年。藤原館長は「生誕140周年の年に貴重な資料を寄贈してもらえたことに縁を感じる。どちらの手紙も啄木の直筆で、当時の心情が読み取れる。家宝として大切にされた資料。適切な環境で保管し、調査研究に役立て、多くの人の目に触れるように展示を検討したい」と話す。