盛岡のミニコミ誌「てくり」を編集・発行する「まちの編集室」が現在、市民への聞き書きを通じて書籍を制作する「聞き書き本プロジェクト」に取り組んでいる。
同誌は「盛岡のふだん」をテーマに、盛岡の文化や暮らし、工芸、風景、食、アートなどと、それらに関わる人物を取り上げてきた。2005(平成17)年に創刊し、昨年20周年を迎え、「聞き書き本」も20周年を記念する企画として立ち上げた。
全国各地で行われている、個人から話を聞いて一冊の本にまとめる「生活史」のプロジェクトを知ったことが企画のきっかけだったという。まちの編集室のメンバー・木村敦子さんは「てくりを作るために取材して聞いた話は、私たち編集者の目を通して完成形になる。聞いた話をそのまままとめる聞き書きは、市民の暮らしの中にある声が残る。『盛岡のふだん』をテーマにする『てくり』ならではの、普段の暮らしの中で積み重なった歴史を伝える本を、いつもとは違うスタイルで作りたいと思った」と話す。
制作に当たっては、盛岡の歴史に詳しい人や、ライター・編集者の経験がある人に執筆協力を依頼。八幡町・生姜町、肴町、上の橋、本町、内丸・桜山、大通、駅前、材木町、鉈屋町・神子田、仙北町、上田、山岸、高松・緑ヶ丘、青山町のエリアに分け、50~80代の約30人に取材した。取材時間は1人につき2時間と決めていたが、話が盛り上がって大幅に時間が延びることや、2回取材を行ったこともあるという。木村さんは「市内のデパートにまつわる話や映画館通りと映画の話、イベントの話など、地域や世代が違っても同じ出来事や場所に関するエピソードが出てくる。みんなが同じ物事を見ていた共通の歴史がある時代だったんだと面白く思った」と取材を振り返る。
「みんなで協力して作る」という思いや、「てくりの活動を支援したい」という声を受け、制作費の一部を募るクラウドファンディングにも挑戦。4,000円以上の支援で完成した書籍を返礼品とするほか、聞き書き本の制作に参加した人として支援者の名前を書籍に掲載する。
現在は6月の発行に向けて校正作業などを進めている最中。盛岡の歴史が分かる資料や古い地図を参照しながら聞き取った内容を確認しているという。木村さんは「私たちが作った聞き書き本が、私たちが校正で頼っている資料のように、後世で盛岡の歴史を振り返る時に役立てばいいなと、道しるべを置いているような気持ちで制作している。昔の話を懐かしく思う世代も、新鮮に思う世代も、『あの頃はどうだった?今はどうなの?』と誰かと話すきっかけになる一冊になれば」と話す。
価格は2,860円。ウェブサイトで予約を受け付け、県内の書店などで取り扱う。クラウドファンディングは1口1,000円~。