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立原道造の「盛岡ノート」が増刷 「盛岡を愛する人へ届け」と思い込めて

増刷版は2007年の再刊行版と同じ装丁

増刷版は2007年の再刊行版と同じ装丁

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 長く品切れ状態だった詩人・立原道造による手記「盛岡ノート」が増刷し、10月19日に発売された。

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 立原道造は昭和初期に活躍し、24歳の若さで急逝した「夭折(ようせつ)の詩人」としても知られる。1938(昭和13)年の9月から10月の約1カ月間、盛岡市内に滞在し、その時の風景や心情を恋人へ語りかける形の手記として一冊のノートにつづっていた。手記の中には、「古風な擬宝珠(ぎぼし)がついた橋」や「中津川の河べり」といった市内の様子のほか、「岩手山」「南昌山」「ヒメカミ山」など盛岡から見える景色が書かれている。

 その手記を「盛岡ノート」というタイトルで、1978(昭和53)年、当時の「かわとく壱番館」が刊行。土産品として買い求める人も多く、すぐに完売した。その後、2007(平成19)年に「盛岡ノート刊行委員会」が再刊。それも1年ほどで売り切れ、品切れ状態が続いていた。

 完売後も「盛岡ノートが欲しい」という問い合わせが寄せられていたほか、初版と2007年の再刊版が、古書店などでは定価よりも高い値段で取引されていることもあるという。現在の「盛岡ノート刊行委員会」事務局を務める「いわてアートサポートセンター」の理事長・坂田裕一さんはこの状況を疑問に思っていた。

 坂田さんは「欲しいと思っている人が多くいるのにほぼ絶版状態で、古本として高い価値も付いている。市民として『この状況は良くないのでは』と感じていた。多くの人に読んでもらいたい、盛岡を愛する人に広く届けたいという思いがあり、増刷に向けて動き始めた」と話す。

 増刷版は立原が盛岡を出発した10月19日に合わせて発売。再刊版と変わらない装丁で、作中に出てくる場所などを記した文学地図も同様に付けた。発売前の14日・15日に先行販売を行うと40冊ほどが売れ、ウェブサイトに告知を載せたところ県外からも問い合わせがあったという。

 立原は、東京へ向かう寝台列車の中で盛岡のことを「僕の愛したちいさな町」と書き記している。坂田さんは「85年前の盛岡の風景、道造さんの目で見た盛岡の美しさ、文学作品として詩的散文の魅力が詰まった一冊。道造さんが愛した盛岡を感じてもらいたい」と呼びかける。

 文庫判、96ページ。価格は1,375円。盛岡市内・岩手県内の書店、野の花美術館、もりおか町家物語館などで取り扱う。

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