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盛岡・専立寺で「夜行書店」 誰もが立ち寄れる社会の隙間に

本堂の一角に設けられた「夜行書店」。さまざまなジャンルの本が並ぶ

本堂の一角に設けられた「夜行書店」。さまざまなジャンルの本が並ぶ

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 専立寺(せんりゅうじ、盛岡市名須川町)で毎週金曜の夜、本を販売する「夜行書店」が開かれている。

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 「夜行書店」は、同寺の日野岳史乗(ひのおかふみのり)さんが考案。日野岳さんは「お寺は誰でもいつでも来ていい場所」ということを広めるため、これまでも本堂を使ってさまざまなイベントを開催してきた。「夜行書店」を企画するきっかけになったのは、新型コロナウイルス感染症の影響による「自粛の波」だった。

 コロナ禍の状況について考えを巡らせていた日野岳さん。自分ができるアイデアの一つとして、2021年6月に「夜行書店」を始めた。夜という時間帯を選んだのは、本と夜の相性が良いことと、昼間は仕事場や学校などそれぞれがいる場所や物事があるからだという。

 日野岳さんは「お寺は受け入れる場所。誰が来ても拒否しない。だからこそ、コロナ禍でも自粛しない。極端な例ではあるが、新型コロナに感染したという人でも受け入れる。外出しづらい、外に出ても立ち寄れる場所がないというなら、お寺に来ればいいという思いがある。そうはいっても、お寺は何か用がないと立ち寄りづらいという気持ちも分かる。そこで、本をきっかけにして遊びに来てもらおうと思い付いた」と話す。

 「夜行書店」は本堂の一角にオープン。並べる本は市内の書店「さわや書店」の職員が選んでいる。日野岳さん側から依頼したところ、さわや書店側が趣旨に賛同し協力を得た。本のジャンルについては日野岳さんからオーダーしている部分もあるが、基本的にはお任せ。小説や写真集、実用書など幅広いジャンルがそろう。本は1カ月半から2カ月ほどのペースで少しずつ入れ替える。

 スタートから半年、多くの人が一度に集まるわけでもなく緩やかに続けてきた。本を並べているものの「買わなくていい、売れなくていい」という考えもある。「本があるから、何かやっているからというのは理由の一つでいい。本を読んでも読まなくても、買っても買わなくても大丈夫。ここに来たら何をしていてもいい。自由に使ってもらえる時間にしたい」と日野岳さん。外に貼り出したチラシを見て立ち寄る人のほか、子どもを連れて訪れる人、ギターの練習をしに来た人もいる。

 今後しばらく継続していく予定。日野岳さんは「お互いを受容し合う社会の隙間が必要だと考えている。密を避けろといわれても、隙間がなければ密にならざるを得ない。夜行書店は空き地のような存在。そこに行けば誰かいるかもしれないし、誰もいないかもしれない。そんな街の中の空き地になれれば」と話す。

 営業時間は18時30分~22時30分。

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