盛岡・上田会館営業終了へ 昭和の面影また一つ消え

昔の面影を残すたたずまいは地域になじみ愛されてきた

昔の面影を残すたたずまいは地域になじみ愛されてきた

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 盛岡市の上田会館(盛岡市上田3)が5月に営業終了となり、取り壊されることが決まった。

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 上田会館は1969(昭和44)年に建設された平屋建ての集合ビル。岩手大学生が多く住むエリアにある。居酒屋など最大9店舗が入居し、現在は2店舗が営業。取り壊しの理由について、建物を所有する高吉建設(秋田県大仙市)の担当者は「建物が老朽化し補修が難しいこともあり、利用者や近隣への安全面を一番に考えた上での決定」と説明する。「懐かしく、落ち着ける場所だったと思う。大変残念ではある」とも。

 同所で33年間営業を続ける居酒屋「大空」。学校が近いこともあり、連日学生が集まりにぎわった。時代が進むにつれ少しずつ客足も遠のき、現在は昔からの常連客が足を運ぶ。店主の佐藤幸子さんは「ずっと覚悟はしてきたが、あらためてその時が来ると残念で寂しい」と話す。閉店の知らせを聞き付け、「大空」から巣立っていった当時の学生たちが駆け付けているという。同店は5月16日に閉店した後、本町通りへ移転する。佐藤さんは「上田は良い街。ここで商売ができて良かった。思い出が詰まった場所と別れるのはつらいが、感謝の気持ちでいっぱい。今までたくさんの幸せをありがとう」と笑顔で話す。

 中心市街地の「盛岡バスセンター」や花巻市の「マルカンデパート」など、県内で昭和の面影を残す建物の閉鎖を知らせるニュースが相次いだこともあり、営業終了を惜しむ声も多い。

 近隣に住む60代の男性は「ここが青春の場所だ」と懐かしむ。「友達や後輩、仕事仲間とよく足を運んだ。無くなるなんて信じられないが、とうとうその時が来たのかと思うと少し悲しい。街並みが変わっていくのは当たり前のことで、受け入れていかないといけない。バスセンターもそうだが、一つの時代が終わるところなのだと思う」と話す。

 若い世代からも取り壊しを悲しむ声がある。通勤で会館の前を通るという20代の女性は「小さいころから変わらずにある建物。無くなってしまうことを知って驚いた。レトロな雰囲気でちょっとした憧れもあった。こういった古い場所を残してほしい気持ちもあるが、仕方ないことかもしれない」と話す。

 取り壊しの詳しい日取りは決まっていないが、年内を予定している。

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