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盛岡市先人記念館で「中井汲泉」展 生誕130年、ほのぼのした画風を

岩手の風物を描いた「南部絵」や木綿の布に描いた「染め絵」。ほのぼのとした優しい画風が特徴

岩手の風物を描いた「南部絵」や木綿の布に描いた「染め絵」。ほのぼのとした優しい画風が特徴

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 盛岡市先人記念館(盛岡市本宮)で現在、収蔵資料展「中井汲泉(きゅうせん)の世界」が開かれている。

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 芸術家の中井汲泉は、同館が顕彰する盛岡ゆかりの先人の一人。京都出身で1929(昭和4)年に盛岡中学校(現在の盛岡第一高校)の図画教諭として赴任。赴任については一度辞退したものの、盛岡から来た使者からの「雪景色もまたようござんすよ」という一言で盛岡行きを決めたという。1956(昭和31)年に京都へ戻った後も盛岡との交流を続けていた。

 汲泉は図画教師としての仕事の傍ら、こけしや土人形など郷土玩具の創作や、盛岡の独特な方言と風俗を記録した絵はがき集「盛岡方言」の作成にも取り組んでいたという。その後、戦争の激化を受けて授業が減ったことから盛岡中学校を退職。戦後は、日本の代表的な民俗絵画「大津絵」に着想を得て、岩手の風物を描く「南部絵」の制作を始めた。

 今回の展示は、汲泉が今年生誕130年を迎えることに合わせて企画。同館が収蔵する作品を展示し、肉筆画や木綿の布を使った「染め絵」のほか、南部絵、創作玩具、絵はがき、絵馬などを展示する。担当学芸員の中浜聖美さんは「先人記念館で汲泉作品を一堂に集めるのは20年以上前の企画展以来になる。肉筆画から染め絵、郷土玩具まで一度に見ることができるのは貴重な機会」と話す。

 展示の後半では汲泉の教え子の福田隆と村田三樹二郎(みきじろう)について紹介。福田は盛岡第一高校の美術教師として約30年にわたって勤務し、汲泉の影響を受けて染め絵作品の制作にも取り組んでいた。村田は汲泉の影響もあり郷土玩具作りを始め、「干支(えと)繭人形」でも知られる「村田民芸工房」を設立している。

 来場者の中には実際に汲泉と交流があった人もいるといい、作品を懐かしむ声も多い。同展のチラシにも使われているこけしの絵を見て、「かわいいので見に行きたいと思った」という来場者もいるという。

 中浜さんは「来場者の声から、汲泉さんが盛岡で愛され、親しまれているということを改めて実感した。身近なところで使われている作品も多く、いつかどこかで見たことがあるような不思議な懐かしさも感じられる。ほのぼのとした画風を、のんびりゆったりした気持ちで眺めて」と呼びかける。

 開館時間は9時~17時(入館は16時30分まで)。入館料は一般=300円、高校生=200円、小中学生=100円。月曜・最終火曜休館。6月19日まで。

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