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もりおか歴史文化館で「雑書」をテーマに企画展 貴重な資料の魅力伝える

展示は「雑書」の基礎知識を紹介する章からスタート。厚みや古さなどの視点から雑書を比べる

展示は「雑書」の基礎知識を紹介する章からスタート。厚みや古さなどの視点から雑書を比べる

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 もりおか歴史文化館(盛岡市内丸)が現在、企画展「『雑書』の世界-家老が書き残した盛岡藩-」を開催している。

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 企画展で取り上げている「雑書」は、同館が収蔵する資料で「盛岡藩家老席雑書」や「盛岡藩家老席日記」などとも呼ばれるもの。盛岡藩の政治を取り仕切っていた家老たちが記録を続けた政務日誌であり、同館には江戸初期の1644年から幕末に近い1849年までの約200年間、190冊におよぶ雑書が収蔵されている。

 「雑書」は江戸時代の盛岡藩を知るための貴重な資料であり、これまでの企画展や常設展などでも資料の一部として展示が行われてきた。一方、解読が難しい言葉や文字が多く、崩し字も使われているため難度が高い資料でもあるという。そこで盛岡市では、資料としての利便性を向上するため、現代の文字に置き換える翻刻(ほんこく)作業を進め、1986(昭和61)年からは刊本として順次出版してきた。

 今回の企画展は間もなく刊行される50巻をもって翻刻出版事業が完了することに合わせ、「雑書」の資料的意義や魅力を伝えようという思いが込められている。担当学芸員の熊谷博史さんは「雑書はもりおか歴史文化館が誇る資料だが、一体どういうものなのかを知らない人、そして翻刻作業について知らない人も多いと思う。今回の展示が雑書について興味を持ってもらう第一歩になれば」と話す。

 展示は4章構成。1章では雑書の基礎知識を解説し、一番古い雑書と新しい雑書、一番厚い雑書と薄い雑書を比べる展示や、読み方の説明、崩し字で書かれた天気のクイズなどのパネルを用意した。2章では雑書の書き手である盛岡藩の家老たちを紹介。歴代家老の出自や仕事内容などを説明する。

 3章では各藩主の時代ごとに雑書の中からエピソードを抜粋して紹介。八幡宮での初めての祭りや放火犯に懸賞金を懸けた話、藩主から藩士への言葉などがある。「私のお薦めは大根泥棒の話。ここで紹介しているのは雑書全冊中の0.02%ほどでしかない。興味が湧いたらほかにどんな記録があるかも調べてみてほしい」と熊谷さん。

 4章は「雑書」という言葉が、雑多な書物のことを指すことから、「アナザー雑書」と題し、「盛岡藩家老覚書(おぼえがき)」という家老が書いた雑書ではない書物や、「盛岡藩御用人雑書」などの家老以外が書いた雑書を展示。家老が残した「雑書」とこれらの資料を読み比べることが、より深く歴史を理解することにつながるという。

 今回の企画展は「雑書」のファンや盛岡の歴史を学ぶ人から喜びの声が届いているという。ミュージアムショップでは雑書の表紙を模したトートバッグや刊本も販売。特にトートバッグは人気で、刊本が2冊入るのが特徴となっている。

 熊谷さんは「今回の企画展に目玉の資料や美しいしい展示資料はないが、小説を読む気持ちでじっくり見てもらえると面白いと思う。雑書を読み解くのはまさに歴史学の真骨頂。盛岡にある貴重な資料の価値と魅力に少しでも関心を持ってもらえれば」と呼び掛ける。

 開館時間は9時~18時(入場受け付けは17時30分まで)。第3火曜休館。入場料は一般=300円、高校生=200円、小・中学生=100円。盛岡市内在住の65歳以上、盛岡市在住・就学の小・中学生は無料。3月14日まで。

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