盛岡の「手で見る博物館」が塙保己一賞受賞 「百聞は一触に如かず」モットーに

大きなサメのはく製も特徴的な頭の形や肌の質感を触って観察できる

大きなサメのはく製も特徴的な頭の形や肌の質感を触って観察できる

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 「桜井記念 視覚障がい者のための手で見る博物館」(盛岡市東中野)が11月16日、「第11回塙保己一賞」の貢献賞を受賞した。

世界遺産や有名建築などの模型が並ぶ文化の展示

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 同館は1981(昭和56)年、当時県立盲学校の教諭で全盲だった故・桜井政太郎さんが自宅を改築して創設したもの。「視覚障がい者の知識を広げたい」という思いで桜井さんが収集・製作した標本や模型など約3000点の資料は、全て触れることができる。

 2011年に桜井さんが体調を崩し、博物館は閉館することになった。その際に現館長の川又若菜さんが桜井さんの同僚だった父親から博物館の存在を聞き、桜井さんの思いを知り収蔵品を引き継ぐことを決意。川又さんの両親が住む自宅の2階へ展示物を移し、同年7月に再び開館した。移転後も全国から多くの視覚障がい者が訪れ、昨年2月に亡くなるまでの間、桜井さんが来館者への解説役を担うこともあったという。

 博物館のモットーは「百聞は一触に如(し)かず」。川又さんは「これは桜井が大切にしていた言葉。耳で説明を受けても、目で見えなければ想像するしかない。視覚障がいを持つ人にとって、触れて観察する触察は自分の想像が正しいかどうか確かめるための大事な手段。触ることで得る情報は多い」と話す。

 収蔵されている資料は動物のはく製や建物の模型、太陽系の惑星モデル、民族楽器、生活道具などさまざま。それらを宇宙・文化・生命に分けて紹介している。ニューヨークにある自由の女神に上ったことがあるという男性が来館した際に自由の女神の模型に触り、「初めて自分が上ったものの形が分かった」というエピソードや、身近で鳴いているカラスやスズメのはく製に触れた子どもたちが大きさの違いに驚くこともあるという。「一日いても飽きない」という来館者も多い。

 「塙保己一賞」は、障がいを持ちながらも社会的な活躍をした人や障がい者のためにさまざまな支援活動を行う団体・個人に向けて埼玉県が送っているもので、同館は「貢献賞」を受賞した。

 川又さんは「一報を聞いて本当に驚いた。博物館を続けていいものか不安も多かったが、それが晴れたように感じる」と話し、「触察は視覚の代用ではなく、味覚や聴覚と同じ1つの感覚としてもっと広まってほしいと考えている。目が見える私たちでも、触ることで分かることがたくさんある。触察の可能性を伝えていきたい」と意気込む。

 見学は完全予約制で、視覚障がい者とその家族や支援者、教育・福祉関係者が対象。入場無料。開館時間は9時~17時。問い合わせは同館(TEL 019-624-1133)まで。

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