「東日本大震災被災者手記集 残したい記録 伝えたい記憶」が3月11日、刊行される。
「震災記憶の風化防止と防災意識の向上」を目的に、盛岡市市民協働推進事業の一環として、市と復興支援を行う「SAVE IWATE」が協働で製作を進めた。刊行のきっかけの一つには、市内に避難してきた被災者らが自発的に当時の経験を話す機会が増えたことがあるという。「震災経験を語り継ぎたいという思いを形にするべく、記録として長く残る手記集の刊行を企画した。
執筆者は市内在住の被災者を中心に募集し、15人が応募。そこに「SAVE IWATE」スタッフ1人を加えた16人による手記が収録された。文章指導講師は、以前「もりおか復興支援センター」のセンター長も務めた作家の斎藤純さんが担当。書き手の思いが伝わるよう、添削は必要最低限に抑えた。
「SAVE IWATE」理事長の寺井良夫さんは「今年で震災から8年。時間と共に意識の低下が進み、被災地から遠い場所になればなるほど昔のことになってきている。でも、決して忘れてはいけないこと。私たち支援者以上に、被災者は強くそう思っている」と話し、「当時を思い出し、文章を書くのは被災者の皆さんにとってつらい作業。それでも、次に起きる災害に備えるためにも、経験や記録を残し、記憶を語り継ぐという強い思いでやり遂げた。多くの人に読んでもらいたい」と呼び掛ける。
手記の内容は震災当日の体験や避難所での生活、盛岡への避難、震災前の思い出など多岐にわたる。巻末には震災から1年目、2年目に「SAVE IWATE」のスタッフとしてボランティア活動に参加していたメンバーらによる座談会も収録している。
3月11日に行われる震災8周年行事「祈りの灯火(ともしび)2019」では、手記執筆者のうち6人が語り部となり、インタビュー形式で当時の体験を話す「語り部に聞く」も行う。今後も機会があれば語り部活動を続けていく構想もあるという。
災害へ備えることの大切さと共に震災当日の様子をまとめた中澤朝子さんは「想定外の災害というものはあるし、いつ起こるかわからない。私たちが語り継いだ物事が何年も後の未来を生きる人の備えになれば」と話す。
A5判、64ページ。1000部発行。市内の教育機関や図書館、公民館などに寄贈するほか、「語り部に聞く」の来場者へ配布する予定。