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盛岡の画材店に「はつよ文庫」 菅原初代さんがたどった美術の記録残して

画集や図録がずらりと並ぶ「はつよ文庫」。奥の額縁には菅原さんが撮影した写真も

画集や図録がずらりと並ぶ「はつよ文庫」。奥の額縁には菅原さんが撮影した写真も

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 画材店「彩画堂(さいがどう)」(盛岡市材木町)のワークスペースに1月、昨年3月に亡くなった菅原初代さんが集めた美術関連本を並べた本棚「はつよ文庫」が設けられた。

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 菅原さんはテレビの大食い番組などに出演し、「大食いの魔女」や「大食いの女王」としても知られ、市民からはパン店「カンパーニュ」の店主としても親しまれてきた。2022年の6月にステージ4の大腸がんであると診断され、本人のツイッター(現X)を通じて昨年3月9日に亡くなったと発表された。

 菅原さんの趣味の一つは美術品の鑑賞と収集。これまで集めた美術品に「新しい居場所」を作ろうと、昨年2月には展示販売を行うコレクション展を彩画堂のギャラリースペースで開き、ほとんどの作品が新しい持ち主へと渡った。コレクション展には菅原さんファンや仕事仲間が駆け付け、中には「菅原さんに美術の趣味があったことが意外」という人も少なくなかった。彩画堂代表の伊山小枝子さんは「私たちにとって初代さんは美術好きの人。大食いをしてテレビに出ているという方が少し不思議かもしれない」と笑顔を見せる。

 コレクション展の開催と併せ、菅原さんが集めた美術関連書籍について「彩画堂に置いてもらえないか」と相談を受けていたという。コレクション展終了後に同店で書籍を引き取った。菅原さんが残した本は176冊。「はつよ文庫」と名付けられ、昨年夏から公開に向けた準備を始めた。本の中身や表紙をきれいにし、「紙町銅版画工房」に依頼して作った蔵書印を全ての本に押した。

 本の多くは画集や展覧会の図録で、菅原さんが県内外で行われた数多くの展覧会に足を運んでいたことが分かる。伊山さんは「初代さんは展覧会に行ったリポートをブログに書いていた。地元の作家の個展にもよく通っていて、『初代さんが来た』『初代さんがリポートを書いてくれた』というのはモチベーションにもなっていたと思う」と話す。菅原さんは岩手県立美術館で解説ボランティアをしていたこともあり、同館にも展示されている画家・萬鉄五郎の本はかなり読みこまれ、たくさんの付箋が貼られたままになっている本もある。「初代さんはすごく勉強家だった」と伊山さん。

 「はつよ文庫」は今後、機会を設けて定期的に公開していく予定。1月27日には、菅原さんと交流があった画家の飯坂真紀さんをナビゲーターに、「はつよ文庫」を紹介するワークショップも行う。伊山さんも本棚に並ぶ背表紙に触れながら「この展示も、この作家も、初代さんが好きそうな感じ」と振り返る。

 「初代さんは興味の幅が広くて、本当は本人が一冊一冊解説してくれるのが面白いと思うし、今にもどこかからやってきて話してくれそう。この書籍たちが一つの場所にあり、皆さんに見てもらうことができる幸せを一緒に感じてもらえれば」と呼びかける。

 営業時間は10時30分~18時。日曜定休。ワークショップの開催時間は13時30分~15時。参加費は1,000円。定員は10人。申し込みはウェブフォーム、電話(019-622-7249)、メール、店頭で受け付ける。

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