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盛岡の「リンゴ」専門店が団子店の事業継承 地域に根付く味と共に未来を開く

団子と餅の製造を担当する小笠原さん。「餅の扱いなら任せて」と笑顔を見せる

団子と餅の製造を担当する小笠原さん。「餅の扱いなら任せて」と笑顔を見せる

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 酸味の強いリンゴを使ったオリジナル商品を企画・販売する「すっぱい林檎(りんご)の専門店。」(盛岡市上田)を運営する「キミドリ」が9月29日、団子・餅などを製造する「七福や」(大館町)の事業を2024年から一部継承することを発表した。

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 「七福や」は2003(平成15)年に開業。その後、上田にある同業の「甘味(あまみ)餅店」を引き継ぎ、上田店として運営してきた。お茶餅やしょうゆ団子などを販売し、本店は県外からもファンが訪れる店となっている。人気店である一方、店主や従業員の高齢化が進み、後継者がいないため岩手県事業承継・引継ぎ支援センターに相談をしていた。

 上田店と距離が近い「すっぱい林檎の専門店。」の店主・藤野里美さんは客として店に通っていた。「七福や」の関係者も同店のアップルパイを気に入っているという。互いにつながりが生まれる中、後継者について検討を進めていた「七福や」側から「全く知らない人ではなく、顔を知っている人がいい」という声があり、事業承継・引継ぎ支援センターの仲介を受けて、「すっぱい林檎の専門店。」が事業継承を打診されていた。

 決意のきっかけには、酸味の強いリンゴと和菓子やあんこの相性を模索していたこともある。「私たちに和菓子のノウハウはないが、通販の経験や新しい技術を生かした製造のノウハウはある」と藤野さん。「盛岡の団子店が減ることや、地域の味がなくなってしまうことが寂しいという気持ちはあるが、その気持ちを理由に継承するわけではない。自分たちが目指す商売の方向性に合っているので事業を継承して生かしたいと考えた」と話す。

 継承内容は「七福や」の店舗名と商品名、上田店の店舗運営、しょうゆ団子やお茶餅、きりせんしょなど一部レシピの引継ぎで、大館町にある本店は継承の範囲外。レシピの引き継ぎは、「すっぱい林檎の専門店。」でアップルパイの製造を行う小笠原円さんが主担当。現在は本店に通い、粉の配合のこだわりやあんこの味などのレシピを教わりながら練習を続けるほか、上田店で販売を手伝うこともある。その際には七福神をモチーフにしたTシャツを着るのも習慣になっている。

 「アップルパイも団子も粉を使うので、やってみたいと思った」と小笠原さん。「米粉は混ぜるお湯の量や使う設備、温度や湿度が少し違うだけで、やわらかさや滑らかさが大きく変化する。そこを調整するのが難しい」と話す。小笠原さんはもち米の生産が盛んな紫波町出身。「餅は扱い慣れている」と意気込み、一部の商品については合格をもらうレベルに達しているという。

 現在の上田店は本店で作った商品を運んで販売しているが、今後は上田店にも製造室を設ける準備を進めている。藤野さんは「今回、継承事業に関わる中で、団子屋や和菓子屋の引き継ぎが難しい要因には、設備の古さや朝早くから仕込みをしなければならないといった点もあると感じた。地域の味を受け継ぎながら、働きやすい環境を整え、未来を開いていきたい」と話す。

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