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盛岡城跡で石垣の積み上げ工事始まる 300年後へ歴史が残るように

クレーンでつり上げられ、元の位置に運ばれていく築石

クレーンでつり上げられ、元の位置に運ばれていく築石

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 国指定史跡の盛岡城跡で5月25日、修復作業が行われている三ノ丸北西部の石垣の積み上げ工事が始まった。

石の位置や角度を細かく慎重に調整する石工職人の皆さん

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 三ノ丸北西部石垣は経年変化や地震などの影響を受け、石垣の一部がせり出すなど崩壊の危険性が高まっていた。市は石垣の修復を行うため、2021年度から石垣の解体工事を開始。石垣がせり出した原因などの調査も行いながら、2022年度に14段343個の石の解体を終えた。この部分の修復工事は1705年以来、約300年ぶり。当時、修復を命じられた家臣の名前は石に刻まれて残っている。

 今回の修復工事は、不安定な状態となった石垣を修理するとともに、歴史の証拠でもあるオリジナルの石垣をできる限り残す方針で進めてきた。解体時には石垣の面を構成する「築石(つきいし)」に番号を振り、積み上げ工事では番号の通り、築石を元の位置に戻す。積み上げ作業は、東京から集まった石垣修復の経験がある石工職人を中心に進められる。

 25日は「積み上げ作業、開始」「オー」の掛け声とともに工事が始まった。築石の重さは1つ平均1トンで、重いもので3トンほどになるという。築石はクレーンでつり上げて元の位置まで運び、石工職人たちが位置や角度を細かく調整しながら慎重に作業を進めた。現在は仮置きの段階で、他の石とのバランスを確認してから最終的な位置を決める。石垣背面の盛土の崩落を防ぐために吹き付けているモルタルや補強用の鉄筋は撤去し、築石を支える「介石(かいいし)」や石垣の裏に込める「栗石(ぐりいし)」を入れるなど伝統的な工法で積み直しを行う。

 1日に作業できるのは3、4個分で、場所によっては1個置くのに1日かかることもあるという。本年度は14~9段目、来年度は8~1段目を積み上げ、工事完了は来年11月ごろを予定している。

 市公園みどり課に担当者・佐々木亮二さんは「この石垣は300年前の江戸時代に一度修復され、現在まで残ってきた。同じ工法を使えばまた300年先まで続く石垣になると考えている。今回の積み直しも伝統的な工法を守りつつ、今の職人の皆さんが重ねてきた工夫を加えて、300年、400年後まで残る石垣にしたい。未来の人にも『良い修復工事をしたんだな』と思ってもらえれば」と話す。

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