「岩手銀行赤レンガ館」(盛岡市中ノ橋通1)で12月18日・19日、日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)岩手地区による「アナロググラフィックポスター展-岩手の食-」が開催される。
「JAGDA岩手地区」では年に1回のペースでポスター展を開催。毎回、モチーフや伝えるメッセージなどに合わせてテーマを設定している。今年のテーマを考えていた矢先、コロナ禍の影響が大きく広がり始めた。岩手地区の会員となっているグラフィックデザイナーらの中には、受けていた仕事が止まった人や急な内容変更があった人もいたほか、急激なオンライン化、デジタル化、新たなアプリケーションの導入といった対応にも追われている。
「JAGDA岩手地区」の幹事でポスター展の企画担当を務める清水真介さんは、この状況下で東日本大震災を思い出したという。「あの時は停電の影響で仕事に使うパソコンを起動できるかどうかを考えていた」と清水さん。それ以来、「デザイナーはパソコンがなければ仕事ができないのか?」という疑問を抱え、コロナ禍の中でその思いは強まっていた。
清水さんは「仕事のやり方は安定していた方がもちろん安心できる。一方、さまざまな災害起き、今回のような感染症による影響を受けた時のように、いろいろな出来事に対応し変化できるスタイルでなければならない部分もある」と話す。
そこで岩手地区の会員に向けて「アナログ技法を取り入れたポスター展ができないか」と提案。了承を得た上で企画の内容を練り上げていった。パソコンがない時代からデザイナーを続けている会員も多く、当時のエピソードを交えて「懐かしい」と感じる人も多かったという。
今回のポスター展では、アナログ技法を取り入れて制作したポスターを展示。パソコンの使用に制限するわけではなく、手書きの文字やイラスト、素材をスキャンして使うなどアナログ表現を用いることをテーマにした。伝えるものがあってこそデザイナーの仕事という考えから、ポスターで伝えるメッセージとしては「岩手の食の魅力」を設定。ポスターを見た人に分かりやすい内容を選び、名物料理や食材、岩手の食の豊かさなどを伝える。
今回はJAGDA岩手地区会員12人と非会員のプロデザイナー2人による作品を展示。完成したポスターだけではなく、制作に当たって使用したアナログ技法にまつわるものも展示し、制作する過程も楽しめるような工夫がされている。同時開催として、県内でデザインを学ぶ学生によるポスターデザインコンペティションも実施。44作品が出品予定で、今回の展覧会と同じ条件とテーマでポスターを制作し、JAGDA岩手地区会員が審査を行う。
清水さんは「仕事として作ったものではなく、デザイナーが自主制作するポスターなので、街なかで見かけるポスターとは違った表現やそれぞれの個性が強く現れると思う。クリエーターにとっては何かの刺激になるような内容になればうれしい。おなかがすくような展覧会なので、いろんな人に楽しんでほしい」と呼び掛ける。
開催時間は10時~16時。入場無料。来場時にはマスクの着用ほか新型コロナウイルス感染症対策への協力を呼び掛ける。