岩手県内トヨタ系8社は5月26日、トヨタの「シエンタ」に改造を施し、新型コロナウイルス感染症の軽症者の移送などに使用できる車両を岩手県へ無償貸与した。
同車両は「トヨタ自動車東日本」が生産し、「岩手トヨペット」が所有している「シエンタ」に移送用の架装を施したもの。運転席がある車両前方スペースと、後部座席以降の後方スペースの間にビニールシートのセパレーターを取り付けて飛沫(ひまつ)感染を防止し、通常は3列シートの車両から2列目の座席を取り外して空間を確保する。
エアコンの制御システムにも改造を加え、車内の空気の流れをコントロール。前方スペースと後方スペースに圧力の差をつけることで、感染者が乗る後部座席側からの空気が前方へと循環しないような仕組みの「飛沫循環抑制車両」となっている。
26日に岩手県庁で行われた貸与式には、トヨタ自動車東日本の白根武史会長、達増拓也岩手県知事など関係者らが出席。白根会長は「車作りをどのようにしていくか、ものづくりでわれわれができることはないかという思いがある。世界中で感染の第2波、第3波が懸念されている。他地域の様子を見ていると、初動が重要だと感じた。岩手県はいまだ感染者0だが、もしものときに役立ててもらいたい」と話す。
達増知事は「感染者がいつ出るか分からない。陽性と判断された人はすぐにしかるべき場所へ移動しなければならない。症状や状況によっては複数の医療機関を移動する必要もある。その移動を支えるこのような車を提供していただき、心強い限り。県民の命と健康を守るために有効に活用したい。継続的な地域貢献に対して改めて感謝する」と伝えた。
当面の間、車両は新型コロナウイルス感染症対策に関する現地機関との打ち合わせ用として活用。感染者が確認された場合、軽症者・無症状者の搬送用として活用する。