桜山神社(盛岡市内丸)の境内に現在、手作りの「アマビエ」人形が展示されている。
「アマビエ」は、江戸時代に現在の熊本県に現れたといわれる妖怪。「もし病気が流行した時には、自分の姿を映して人々に見せるように」と伝えたことから、疫病を退ける妖怪という説もある。アマビエは長い髪とくちばし、うろこ、3本の足という特徴的な姿で、多くの人が「新型コロナウイルス感染症」の早期収束を願いイラストなどを作成し、注目を集めている。
人形を制作したのは、権禰宜(ごんねぎ)の佐藤辰吾さん。佐藤さんはこれまでも漫画のキャラクターや動物などをモチーフにした人形を作り、季節やイベントに合わせて境内に展示していた。同神社では参拝客に授与する御朱印へ季節ごとに違ったはんこを添えており、知人から「御朱印にアマビエのはんこを添えてみては」という提案を受けて、初めて「アマビエ」を知った。
佐藤さんは「新型コロナウイルスの影響は人の生死にかかわることだから、はやっているから、面白いからという理由で『アマビエ』を使うのはいかがなものだろうかと考えていた」と話す。人形を作ろうと心が動いたきっかけは、タレント・志村けんさんが新型コロナウイルス感染症による肺炎で亡くなったことだったという。志村さんの追悼番組を見て笑顔になった時、「追悼番組なのに笑ってしまう、笑ってもいいのか」という思いが生まれた。
その後、佐藤さんが境内で仕事をしていると、通り掛かりの人が話しかけて来ることが数回あったという。その際に「気持ちが悲しくなる」「悲しい出来事があった」と打ち明けられたこともあり、「みんな誰かと話したい気持ちがある。見て笑えるものを作ろう」と決心した。
イラストは多くの人が描いていることから、これまでのノウハウを生かして人形を作成。アマビエ人形は発泡スチロールや紙粘土、毛糸などを使い、配色などにオリジナル要素を加えながら2日ほどかけて完成させた。4月の初めころから境内に展示を始めると、SNS上などで広まっていったという。
「このような状況なので積極的に見に来てもらうことはしないでほしいが、感染症の収束までは目につく場所へ置いておく予定」と佐藤さん。「使っているのは長期の展示には向かない素材なので、長く展示しなくていいように、早く収束することを願う」と思いを込める。