岩手大学人文社会科学部人間文化課程芸術文化専修プログラム、教育学部学校教育教員養成課程小学校教育コース・中学校教育コース美術サブコースの学生らは現在、ツイッターとインスタグラムを通じて卒業制作を公開している。
学生らは3月6日から10日まで卒業制作展を開催する予定だったが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を考慮し中止を決定。同大学では卒業式など卒業生全員が集まる式典が中止となっている。
実行委員長の外崎みふゆさんは「残念、悔しい、やりきれないといった気持ちとともに、目指していたものがなくなった喪失感もあった。しかし、来場者の皆さんやわれわれ学生、広く見れば大学のことを考えればこの決断しかなかっただろうと思う」と話す。
人文社会科学部は2016(平成28)年度に改組。本年度は改組後の1期生が卒業を迎え、人文社会学部・教育学部・美術デザイン分野・書道分野が合同で行う初の卒業制作展にもなる予定だった。「名称こそ変わったものの岩手大学に芸術を学び、愛している人がいることには変わりないことを皆さんに知っていただき、引き継いで新しく発展していく礎となれればと考えていた」と外崎さんは悔しさをにじませる。
卒業制作展の中止を受け、卒業制作展の告知や制作中の様子などを発信していたツイッターとインスタグラムを通じ、展示予定だった17人の学生による卒業制作・研究の公開をスタート。3月11日から毎日1人ずつ紹介を行っている。
SNSを担当する佐藤優花さんは「ツイッターとインスタグラムは、作品を会場で見るのが楽しみになるように、また、会場を訪れた時により楽しんでいただけるように作品の見どころを紹介したいという思いでスタートした。中止後は作品の一部ではなく、全体が分かるような写真を使い、題目・題名・作者よりコメントなども紹介している」と話す。
紹介する作品・研究は絵画・ビジュアルデザイン・インダストリアルデザイン・彫塑・美術史・書道・美術教育の7分野、54点。チラシやポスターには「7分野」であることから7つの円で構成したデザインが使われている。投稿には作品の写真と共に作者のコメントを載せることで、作品の見どころや意図を感じて楽しんでもらおうと工夫を凝らした。「作品への質問などがあればできる限り応えたい。感想や意見も聞かせてほしい」と佐藤さん。各SNSのメッセージ機能や、リプライ、コメントで受け付けている。
掲載期間などは設けず、削除することなく作品は公開を続ける。27日には全員分の紹介が終わる予定。「自分の作品をきちんとした場所に飾り、誰かに見てもらうというのは何よりの楽しみ」と外崎さん。「今回はこのような形となったが、これからも岩手大学で芸術を続ける人たちがいる。来年こそは改組後初の卒業制作展を開催できると信じているので、皆さんに来場してもらいたい」と呼び掛け、未来への期待を寄せた。