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「未来を創るどうぶつ医師団」創設 動物園水族館動物をチーム医療で守る

記者発表に出席した「未来を創るどうぶつ医師団」メンバー

記者発表に出席した「未来を創るどうぶつ医師団」メンバー

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 動物園水族館動物医療チーム「一般社団法人 未来を創るどうぶつ医師団」が10月4日、創設された。

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 動物園や水族館で飼育されている動物の福祉や医療レベルの向上、人材育成などを目的に結成された。法人格を持つ団体として、こういった取り組みを行うのは全国で初となる。日本は世界的に見ても動物園・水族館が多い一方、動物園水族館動物に対する医療は発展途上。施設同士の連携も薄く、動物の健康管理を科学や学術の面からフォローしきれていないところがあるという。専門的に学べる場所やプログラムもないため人材育成も難しく、各施設にいる獣医師個人の努力に頼る部分も大きい。特に中小施設では、情報や技術、時間、人材の不足などにより苦労している現場が多い。

 これらの課題を解消しながら、動物園水族館動物医療の現状の啓発を行い、診療費や医療機器の確保、持続可能なチーム医療の展開を目指すために「未来を創るどうぶつ医師団」を設立。設立背景の1つには、今年4月に岩手大学農学部付属動物病院に開設された、全国初の「動物園水族館動物診療科」がある。チームは同科と連携を取りながら活動を行っていく。

 理事長を務める岩手大学農学部共同獣医学科准教授の福井大祐さんは「今抱えている課題を解決するには、日本の皆さんの『動物観』を変える必要があると思っている。動物園や水族館で暮らす貴重な動物を、国民が守るという意識を醸成したい。そのためには動物園水族館医療の現状を皆さんに知ってもらう必要がある。そのためにチームを作った」と話す。「現在動物園で飼育されている動物の8割、9割は施設で生まれ育ったもの。地球からの大切な預かり物を守る責任が私たち人間にある。全力で守り、全力で未来に引き継ぐ。『守り切る』という思いを持っている」とも。

 15日に行われた記者発表には、福井さんのほか、盛岡市動物公園の辻本恒徳園長、NPO法人「もりねこ」理事長の工藤幸枝さん、盛岡市動物公園の獣医師・松原ゆきさんの4人が出席。チームは現在、この4人を含めた十数人のメンバーで活動している。

 辻本園長は「動物公園には約100種の動物がいて、獣医師は自分を含めて3人。限られた予算の中では、すべての動物に大学病院での治療を受けさせるのは難しく、取捨選択を迫られる。動物の健康管理は動物園の基盤。法人としてバックアップすることが力になると期待している」と話す。松原さんは「野生動物の獣医師を目指して勉強してきたが、専門的な治療法を学べる機会はほとんどない。地球の財産である貴重な動物と向き合っているが、『本当にこの治療で大丈夫か』という不安と戦う勇気が必要。毎日がぶっつけ本番。動物を元気にしたいのに、それができない現状がもどかしい」と訴え、「設備や知識、技術があれば救える命があったと思う。チームで診療することで不安も解消されるし、自分のレベルも動物医療のレベルも上がる」と期待を寄せる。

 チームでは今後、動物園水族館動物の症例受け入れや診察を行うほか、SNSやイベントを通じた現状と課題の普及啓発活動、獣医師の育成や学生教育、動物園水族館獣医師向けの講習会・研修会の実施といった活動を予定。12月10日まで高額医療費や遠征費、医療器材費などを確保するため、クラウドファンディングにも挑戦するほか、寄付や募金も呼び掛ける。

 福井さんは「活動理念に掲げている『One Health(ワンヘルス)』は、人間と動物の健康と地球の健全性は1つにつながっているという考え方。未来の子どもたちや動物の幸せを考えて活動していく。動物園や水族館の環境に対する誹謗(ひぼう)中傷も多く見るが、本当に困っているのは動物と現場のスタッフたち。批判や同情ではなく、協働してもらいたい」と呼び掛ける。

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