毎年初冬に行われる恒例の「盛岡文士劇」が12月2日・3日、盛岡劇場(盛岡市八幡町)で行われた。
2日間で計3回行われた公演には年配客を中心に延べ約1,500人の観客が訪れた。
公演は1部の「現代劇」と2部の「時代劇」の2部構成で行われ、幕間には実行委員役員による「口上」(挨拶)も例年通り披露された。
1部の「盛岡版『芝浜』 八幡町出世横町」にはアナウンサーで映画「壬生義士伝」の方言指導を務めた畑中美耶子さんや岩手日報社取締役の宮森淳博さんのほか、丹野尚子さん(岩手朝日放送)、大塚富夫さん(IBC岩手放送)、蔦京平さん(テレビ岩手)など地元放送局のアナウンサーらが出演。古典落語の「芝浜」を現代劇に仕立てた笑いたっぷりのオリジナル脚本に、台詞がすべて盛岡弁といういこともあり、観客の中には「懐かしい上に親しみがあって、笑いっぱなしだった」人も見られた。
2部の「丹下左膳」では作家の高橋克彦さんや斎藤純さんら地元の文士が顔を揃えたほか、彫刻家の長内努さん、谷藤裕明盛岡市長なども出演。今回は初めて「プロの女優」として藤田弓子さん、さらに漫画家のロドリゲス井之介さんが東京から駆けつけた。芝居では現代風の踊りや似顔絵書きの場面が盛り込まれたほか、後半の殺陣(たて)の場面では、見事な刀捌きも披露され、観客からは惜しみない拍手がおくられていた。
この日、会場に訪れた年配の女性は「友人に誘われて初めて見た。こんなに面白い劇だとは思わなかった。来年も必ず見に来る」と話していた。また、別の女性は「チケットを取るために発売日に1時間(プレイガイドに)並んで手に入れた。でも、それだけの価値はある」とも。
盛岡文士劇は地元の文士や名士らによる素人芝居の公演として1949年から1962年まで行われていたが、旧盛岡劇場の閉鎖とともに公演も中止に。その後、1995年に高橋克彦さんが中心となって同劇を復活させ、今年で復活第13回目の公演を迎えた。文士劇は全国各地で行われていたが、時代の流れとともに行われなくなり、現在は盛岡のみとなっている。
同公演の模様は年明けの1月2日・3日にIBC岩手放送で放映予定。