猫用グッズの製造販売行う「クロス・クローバー・ジャパン」(盛岡市菜園1)が開発した「ねこずきのおくるみ」が10月16日、日本デザイン振興会が主催する「2024年度グッドデザイン賞」を受賞した。
同商品は自宅で猫に皮下点滴をするための補助具。高齢の猫は腎臓病にかかりやすいとされ、治療のために皮下点滴を打つ場合もある。点滴のための定期的な通院は猫や飼い主の負担となるため、医師の指導を受けて自宅で点滴をする飼い主もいるが、猫の安全を確保しながら体を固定する「保定」が必要。猫が嫌がって暴れることもあり、飼い主が1人で保定することは難しい。
「クロス・クローバー・ジャパン」の社長・太野由佳子さんは、自宅で皮下点滴をする飼い主からの「点滴中に猫が動いて、針が外れる」「猫が暴れて、針が自分の手に刺さってしまった」といった悩みを聞いたことをきっかけに、猫が嫌がらず、飼い主が1人で保定できる商品の開発を始めた。自身が飼っていた猫「ぽんちゃん」が慢性腎不全の入院治療を受けていた経験から、「自宅でケアできれば負担を減らせたかもしれない」という思いもあったという。
完成した製品は服のように着せる形で、前足や尻尾が自由に動かせる。腹巻やベルトで体を固定し、点滴の針が差しやすいように肩甲骨部分が開く設計にした。背中部分には開閉しやすいファスナーを取り付け、後足側のひもを絞ると前足から尻尾までを保定することもできる。はっ水性とストレッチ性がある素材を使い、丸洗いも可能。製造は久慈市の縫製工場が担当する。
着せる形のデザインは試作の失敗から生まれたが、試しに猫に着せてみると前足を外に出す方が落ち着いた様子を見せ、抵抗せずスムーズに保定できることが分かった。グッドデザイン賞の審査員からも、実体験に基づいた設計である点や、猫と人間の負担を軽減する手法を考慮している点、手入れが簡単な点などが評価された。
実際に使用した人からは「1人で自宅で皮下点滴ができるようになり夢のようだ」という感想も寄せられたという。太野さんは「自宅で猫をケアするための特殊な製品で受賞したこと、同じ困り事を抱える人の役に立てたことがうれしい」と話す。
同社は「猫の困り事を解決すること」を目指して製品開発に取り組み、グッドデザイン賞を受賞するのは7回目。「常に猫目線のものづくりに取り組み、猫たちや岩手の職人の技術など多くの人の協力があってここまで来られた」と太野さん。「今後も高齢猫や闘病中の猫、体が不自由な猫のためのサポートグッズを作り、猫の本能を抑えるのではなく、猫が猫らしく生きていける手伝いをしていきたい」と意気込む。