国土交通省観光庁が作成した「宿泊施設向け国際基準に対応した持続可能な観光にかかる取組事例集」に、ホテルエース盛岡(盛岡市中央通2)で行われている「中央通まちかどマルシェ」が掲載された。
国連世界観光機関(UNWTO)では、持続可能な観光を「訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光」と定義。UNWTOを含めた国連機関や国際NGOによるグローバルサステナブルツーリズム協議会は、持続可能な観光の実現に向けたガイドライン「GSTC基準」を設けている。
観光庁では、持続可能な観光の取り組みが環境保護だけではなく、ビジネスチャンスを広げ、地域社会の持続可能な発展の促進になるという点に焦点を当て、GSTC基準に対応した日本各地での取り組みを紹介する宿泊施設向けの事例集を作成した。
ホテルエース盛岡で毎月第2・第4土曜に開かれる「中央通まちかどマルシェ」には、地元のハンドメード作家や飲食店が出店。実行委員会が「初心者が新規参入しやすく、雨天や冬場にも出店できる環境を整えたい」という思いでイベントを立ち上げた。同ホテルはその考えに賛同し、宿泊客の楽しみや地域のにぎわい創出につなげようと1階ラウンジと屋外広場を会場として貸し出している。同イベントがGSTC基準の「地域サービス」「地域住民の生活」の2項目に対応し、「地域支援のためのマルシェ開催」という事例として掲載された。
支配人の田中宣行さんは「観光庁から問い合わせが来るまで、私たちも持続可能な観光に関する定義や国際的な基準があることを知らなかったので、スタッフ一同とても驚いた。まさに『青天のへきれき』」と話す。
「中央通まちかどマルシェ」は4月13日の開催で20回を迎え、出店希望者も増えているという。「場所を提供しているだけの私たちが評価されていいのか、という気持ちもある。実行委員の皆さんや、出店者・来場者の皆さん、地元を盛り上げようと協力してくれる皆さんの力があってここまで続いていると思う」と田中さん。「ブランディングの一環として、同業他社ではやらないことをやろうという思いを持ち続けている。その思いから協力した取り組みが評価されることはうれしい。スタッフのモチベーションにもつながっている」と喜びの表情を浮かべた。