盛岡市と「福祉実験カンパニー」として障害者アートの商品化などを手がける「ヘラルボニー」(盛岡市開運橋通)が12月27日、地方創生に関する包括連携協定を締結した。
同協定は、市と同社がそれぞれの資源を相互に活用し、市の地域課題の解決や地域社会の発展、誰もが生きやすい多様性を尊重する「共生社会の実現」などが目的。これらを達成するため、福祉を起点とした街づくりやアートを生かした地域振興、産業振興、ふるさと納税の推進などに連携・協力して取り組む。
「ヘラルボニー」は2018(平成30)年の設立から本社を盛岡に置き、障害が持つイメージの変容と福祉領域の拡張、福祉を起点とした新たな文化の創造に取り組んできた。国内外の主に知的障害のある作家によるアート作品のライセンス管理のほか、作品をファッションやインテリアなどの製品に落とし込むブランドの運営などを手がけ、2021年には市内にアートギャラリー、2022年にはブランドの常設店舗を開設。今年はアートを活用したラッピングバスを運行するなど、地元企業と連携した事業も進めてきた。地方自治体と協定を結ぶのは今回が初めてとなる。
締結式には内舘茂市長と、ヘラルボニーの共同最高経営責任者(Co-CEO)松田文登さんを始めとする関係者らが出席。内舘市長は同社ブランドのネクタイやネックストラップを身に着けて登場した。
松田さんは「盛岡にヘラルボニーの店舗やアートがあることで、そこが障害の有無にかかわらずいろんな人が安心して集まれる場所になっている。それは、ハード面ではなく、ソフト面を変えていけるということ。今回の協定を通じて、障害のある人とリスペクトのある出会いがある街づくりや、障害が持つ意味の変容、誰もがありのままに活躍できる社会の実現に取り組みたい」と意気込む。
内舘市長は「ありのままが受け入れられる街づくりを進める上で、地元経済も重要となる。両方を体現しているのがヘラルボニーの取り組み。協定をきっかけとして、市民一人一人に優しい盛岡、個性が光り輝き、誰も取り残さない、優しく強い盛岡の実現を目指したい」と期待を寄せる。
今後は街の中でのアート展示やふるさと納税の返礼品、街づくりに関する会議の開催などについて検討を進めていく。