矢巾町で高アミロース米の生産・加工・販売に取り組む「あみちゃんライズ」は7月20日、玄米粉と町産のズッキーニなどを使った菓子「yahaba treats(ヤハバトリーツ)」の試食会を開催した。
同社では、でんぷん質「アミロース」が通常の米よりも約80%多く含まれる高アミロース米「あみちゃん米(まい)」を2016(平成28)年から栽培。玄米粉に加工して販売するほか、玄米粉を使ったシフォンケーキとクッキーを製造している。
代表の佐々木弘見さんは米の利用価値の向上や消費拡大を目指し、新たな特産品の開発を考えていた。検討を重ねる中で、動物由来の食品を使わないビーガンフードについて知り、興味を持ったという。
「ビーガンフードには、アレルギー体質の人や、病気などで食事制限をしている人でも食べやすいものがある。みんなで一緒に食べられる、多様性があるものを作りたかった。今後のインバウンド需要を見据えてもメリットがある」と佐々木さん。レシピ開発を始めたものの、ビーガンフードを個人で考えることは難しく、専門家に協力を依頼。ビーガンの普及に取り組むベジフードプロデューサーの千葉芽弓さんと共に、今年の1月ごろから本格的に特産品としてのビーガンスイーツ作りを始めた。
第1弾として開発したのは、玄米粉と矢巾町産のズッキーニを使ったスフレとショートブレッド。スフレの生地には規格外のズッキーニをすりおろして加え、ショートブレッドは乾燥させたズッキーニの皮を使っている。スフレの味は、カボチャ・シトラスプレーン・ココアの3種類。カボチャ味は酒かすを組み合わせることでチーズのような風味を出した。ショートブレッドは粒の大きさが違う2種類の玄米粉を混ぜて、ざくざくした食感に仕上げた。味はプレーンとココアで、非常食としてストックできるように長期保存が可能な缶詰製品としている。
試食会には高橋昌造町長と廣田清実町議会議長など関係者が参加。廣田議長は「ズッキーニがお菓子になることには驚き。スフレのしっとりした食感はいいが、ズッキーニをパリパリにして加えるなど、アクセントが欲しい」と感想を述べ、高橋町長は「高齢者としてはやわらかい食感はうれしいので、2つのパターンがあるといいかもしれない。規格外のズッキーニを使う点は食品ロスの解消につながる」とアドバイスした。そのほか、学校給食や病院食での提供、地元の人が手に取れる販売場所などについての意見が出た。
今後は試食会での意見を基に商品を改善し、商品化と製造に向けたクラウドファンディングの実施も予定している。佐々木さんは「やっとここまで来た。農業という仕事は大変で、持続可能なものではない。町で生産されているものを使うことで、消費が増え、農業の支援にもつながると考える。ビーガンスイーツをきっかけに、国内外の人に矢巾を知ってもらいたい」と意気込む。