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松沢漆工房の「うるし茶」に血圧を抑制する可能性 ウルシの新たな価値に期待

うるし茶を手に笑顔を見せる松沢さん(中央)、杉山さん(右)、上杉さん(左)

うるし茶を手に笑顔を見せる松沢さん(中央)、杉山さん(右)、上杉さん(左)

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 漆の精製加工・漆塗り製品の販売などを行う「松沢漆工房」(盛岡市仙北2)が販売する「うるし茶」に、血圧の上昇を抑える効果が期待できることが、岩手生物工学研究センター(北上市)と岩手医科大学薬学部(矢巾町)による研究で分かった。6月9日、3者が公表した。

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 松沢漆工房では以前、ウルシの枝に含まれる成分について岩手科大学薬学部のグループと研究を行い、ウルシの枝から抽出した成分が血圧低下効果を有する可能性を明らかにしている。今回は同社が2018(平成30)年から製造販売する、ウルシの種を焙煎した「うるし茶」についての効果を検証することを目的に研究を行った。

 研究に関わる岩手生物工学研究センターでは、岩手県産の農林水産物の抽出エキスを集めて独自に構築した「抽出物ライブラリー」を活用し、健康機能性の探索に取り組んでいる。松沢漆工房は同ライブラリーへうるし茶を提供。うるし茶から抽出したエキスを調べた結果、血圧の上昇を促す酵素「アンジオテンシン変換酵素(ACE)」の働きを抑える成分が見られた。その後、ウルシの枝の研究に携わった岩手医科大学薬学部と連携し、効果の検証を進めた。

 同大学では、遺伝的に血圧が上がりやすくなっている「高血圧ラット」を用いた実験を行った。90日間の試験期間中、うるし茶を与えたグループと水を与えたグループの血圧を測定して比較したところ、うるし茶のグループでは、個体差は見られたものの最高血圧と平均血圧が共に抑制される効果が見られたという。

 岩手生物工学研究センターによる研究の結果は3月に開催された日本農芸化学会2023年度大会で、岩手医科大学薬学部の実験結果は同月に開催された日本薬学会第143年会で報告を行った。今後も3者が共同で研究を進め、うるし茶に含まれるどの成分がACEの働きを抑えるのか特定を進めるなど、うるし茶が持つ機能性の解明を目指す。将来的には機能性表示食品としての販売も目標だという。

 松沢漆工房の松沢卓生社長は「ウルシはいろいろな恵みを与えてくれる植物。ウルシの新しい可能性や価値、漆器などの製品以外の新たな展開が見えてきた。まずは飲み物としてのウルシにも親しんでもらいたい」と話す。

 岩手生物工学研究センター生物資源研究部の上杉祥太さんは「過去の研究の蓄積があったからこそ、今回の研究につながっている。ウルシという素材は岩手にとって重要な資源の一つ。古くから使われてきたものに、食品としての新たな価値が加わったことはうれしく感じる」と話す。

 岩手医科大学薬学部医療薬科学講座創剤学分野講師の杉山育美さんは「今回の研究は医学的にも価値があるもの。岩手は脳血管疾患による死亡率が高く、高血圧症の患者も多い。今後、研究を進めてうるし茶の成分や効果を詳しく調べることで、お茶を飲む日常の動作を予防として取り入れられるようになるかもしれない」と期待を込める。

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