「ベアレン醸造所」と「岩手大学クラフトビール部」が12月14日、ビールを通じて岩手が抱える農業の課題に取り組む「つなぐビールプロジェクト」を始めた。
プロジェクトに関わる岩手大学クラフトビール部は、2021年に同大学の農学部と経済学ゼミの学生を中心に発足。農家の高齢化や離農による農地の荒廃といった課題を解消することを目的に、県内の遊休農地や休耕田を活用しビールの原料となる大麦の栽培活動に取り組んでいる。部の前代表を務めた佐藤稜さんが昨年4月ごろ、ベアレン醸造所側に「県産大麦を作っている」という話をしたのがプロジェクトのきっかけとなった。
同部では現在、陸前高田市と紫波町で二条大麦を栽培。今回は陸前高田市の畑で栽培した大麦と遠野市産・軽米町産のホップを使い、県産原料100%ビールを醸造する。14日には、ベアレン醸造所が運営する醸造設備を備えたパブブルワリー「菜園マイクロブルワリーwith Kitchen」で仕込みの作業を行い、同社社長の嶌田洋一さんと佐藤さんのほかプロジェクト関係者らが報道陣に向けてプロジェクトの説明や思いを話した。
佐藤さんは「プロジェクト名の『つなぐ』には多くの人とつながっていくプロジェクトであるという思いを込めた。私たち学生、農家の皆さん、ビールを醸造する皆さん、消費者の皆さんとつながって輪を広げていきたい。ビール部の学生が種まきから収穫まで文字通りほとんど手作業で育てた大麦が、どんなビールになるか楽しみ」と話す。
嶌田さんは「これまでベアレンでは地域密着を大切にしてきた。今回のプロジェクトは、地域の中で新しい循環を生み、さまざまな課題を解決する第一歩。岩手のものを使って、岩手で作り、岩手の人が飲むという流れを作っていきたい。今後、長く続いていくプロジェクトなので一緒に応援してもらえれば」と呼びかける。
今年は約150リットルを醸造予定。1月中の完成を見込み、「菜園マイクロブルワリーwith Kitchen」の店内とテイクアウトで提供する。飲み口がすっきりしたピルスナータイプのビールに仕上がる予定。嶌田さんは「麦の質によって味も変わるので、どんな味わいになるかは今はまだ予想でしかない」と話す。
プロジェクトでは今後、県内各地に麦の生産地を作る「モルトバレー」構想を掲げ、醸造過程で出る麦芽の搾りかすを栽培肥料に活用する考えもある。大麦の収穫量を増やし、来年度以降はベアレン本社工場での醸造、商品としての県内での流通を目指す。