盛岡市内各所で現在、伊吹有喜さんによる小説「雲を紡ぐ」をテーマに、作品の舞台となる盛岡の魅力を発信するプロジェクト「『雲を紡ぐ』でつながろうプロジェクト(雲つなもりおか)」が行われている。
「雲を紡ぐ」は、岩手の伝統工芸品「ホームスパン」を軸に、東京で暮らす高校生・美緒と盛岡でホームスパン職人をしている祖父・紘治郎の関わりを通じて親子3代の心模様を描く物語。「雲つなもりおか」は、小説のメイン舞台となる鉈屋町などについて発信しようと、盛岡での暮らしの中から生まれた価値や魅力の普及啓発などに取り組む「盛岡ブランド市民推進委員会」が昨年始めた。
プロジェクトの拠点となっているのは、作品に登場するホームスパンのショールームのモデルとなった「大慈清水御休み処(どころ)」。同施設を事務所として活動する「盛岡まち並み塾」の協力の下、コンセプトブックカフェを開き小説の世界観を表現するほか、鉈屋町周辺を紹介するパネル展、盛岡にまつわる本やホームスパンの販売、関連展示などを行う。喫茶コーナーでは小説に登場する飲み物も提供する。
「盛岡まち並み塾」事務局の岩見麻梨子さんは「昨年は読者の人やホームスパン好きの人が県内外から足を運んでくれた。鉈屋町を目的地として訪れてくれることがうれしい。鉈屋町に住む皆さんも小説の舞台になったことを喜んでいて、その声を発信できたことも良かったと感じている」と話す。
2年目となる今年は規模を広げ、鉈屋町だけではなく市内各所でプロジェクトを展開。鉈屋町から近い肴町商店街や、小説にも登場する「紺屋町番屋」では「雲を紡ぐ」の本を読むことができる「もりおかまちかど“雲つな文庫”」を行っている。
期間中は、小説に登場する場所を巡ってクイズに答えるミステリーハントや学生によるブックカバーデザイン展など関連イベントを開催予定。日程や内容はプロジェクトのインスタグラムアカウントや市内で配布するプロジェクトマップに掲載する。マップの紹介文には小説に出てくるフレーズが使われている。
岩見さんは「街全体の魅力を発信する機会をつくりたい。鉈屋町は始まりの場所。小説に出てくる場所をつなぎながら、来場者と地域、そして運営する私たちがつながっていきたい。盛岡の風土に触れるきっかけにしてもらえれば」と呼びかける。
11月29日まで。