東北6県でドラッグストアを展開する「薬王堂」と、障がい者アートの商品化などを手掛ける「ヘラルボニー」が2月22日、初のコラボレーション商品を発売した。
ヘラルボニーは日本全国の福祉施設などと連携し、主に知的障がいを抱える作家とライセンス契約を結び、アート作品の商品化など多様な事業を展開。「異彩を、放て。」をモットーに、障がい者に対するイメージの変容を目指し、「障がいは欠落ではない」というメッセージを伝え続けてきた。
薬王堂の取締役常務執行役員・西郷孝一さんは、知人の紹介を受けて「ヘラルボニー」の取り組みについて知ったという。「ヘラルボニーという名前は聞いたことがあったが、どんなことをしているのかを詳しく知らなかった」と西郷さん。その後、ヘラルボニーの事業について知り、思いに共感してコラボレーションを提案した。
ヘラルボニーの副社長・松田文澄さんは「私たちと同じく岩手県に軸足を置き、東北6県で店舗を展開する薬王堂との連携は、地方の可能性を拡張できると感じ、コラボを決めた。障がいの概念が地域に溶け込むことで、変わっていく豊かさをつくれたら」と話す。
コラボ商品は2社による共同開発。ヘラルボニーが契約を結ぶ作家の中から、薬王堂が作品を選び商品に落とし込んだ。今回起用したのは、陸前高田市出身の田崎飛鳥さん。田崎さんは自然の風景や動物などをモチーフにした絵画を多数描いている。
販売する商品はトートバッグ(1,650円)、エコバッグ2種(M・L、各880円)、Tシャツ2種(S・M・L・LL、各2,750円)、スエット2種(S・M・L、各3,300円)、フリース4種(S・M・L・LL、各3,850円)。トートバッグとエコバッグは東北6県の薬王堂358店舗とECサイトで取り扱い、Tシャツ・スエット・フリースはECサイトのみでの販売となる。商品には田崎さんの絵画を複数使用し、身に着けてもらうことにより多くの人へアート作品を広めていくことを狙う。
好評を受けて現在、一部商品は入荷待ち状態になっている。特に陸前高田市の店舗では好調だという。今後、新たな商品の開発を考えているほか、薬王堂の店内をギャラリーとして活用するアイデアも出ている。
松田さんは「薬王堂は幼い頃から当たり前にある身近な店。そんな場所にヘラルボニーの作品がある。私たちは『才能は披露して初めて才能になる』という考えも持っているが、作家の才能を薬王堂で披露することが本当にうれしい。障がい者アートが日常に溶け込むことで、ソフト面でのバリアフリー開拓も進むのではないかと感じている」と期待を寄せる。
西郷さんは「実店舗には、商品を置くことで地域の皆さんに知ってもらえる、買ってもらえる、使ってもらえるという強みがある。今回は商品自体をギャラリーのようにして、たくさんの人にアート作品を見てもらいたい。ヘラルボニーが挑むことに少しでも手助けできれば」と呼び掛ける。