岩手県立大学ソフトウェア情報学研究科の学生2人が6月2日、コンピューターのソフトウエアおよびハードウエアの企画・研究・開発・設計などを行う学生ベンチャー企業「Defios(デフィオス)」を設立した。
起業したのは博士前期課程2年の近藤鯛貴(たいき)さんと竹田大将(ひろまさ)さん。近藤さんが社長、竹田さんが副代表を務める。2人はコンピューターの性能を引き出すことであらゆる処理を高速化する「高速化技術」の研究を行ってきた。以前からさまざまなプロジェクトを通じてICT技術の社会実装に向けた研究に取り組んできた一方、「人々の生活を良くするICT技術が最大限活用されていない」「技術の普及には多くの障壁がある」と感じていたという。その思いが起業につながっている。
「コンピューターは高性能になるにつれて複雑さも増す。だからこそ『技術って大変』と思う人も多くいる」と近藤さん。「私たちが目指すのは、誰もが簡単に技術を使い、課題が解決できる社会。技術を使いこなすのが難しいと思っている人の手助けをして、最先端のICT技術を誰でも使えるようにしたい」と話す。
6月24日には同社の事業紹介やデモンストレーションを行う起業キックオフイベントを開催。超小型で安価なコンピューターにカメラを取り付けて指定した被写体をリアルタイムで検出する技術や、同じく超小型コンピューターを使って小さな画像を拡大・鮮明化し視認性を向上させる超解像技術などを紹介した。
竹田さんは「私たちの技術は専門的な側面が強く、説明しづらいのが課題。簡単に言うと、私たちが得意なのは小さい・速い・安い。コンピューターの性能を引き出すのは計算を速くすること。安価なコンピューターでも最大限に性能を引き出せば高度な計算ができる。例えば小型コンピューターとカメラを使ったリアルタイム検出は工場などでの遺物検知に、超解像技術は安価なデジタルサイネージの実現が可能になる」と話す。
起業に当たって同大学の鈴木厚人学長は「よく決断したと思う。これからは自分たちの技術がどうすごいのか、何に使えるのかをきちんと伝えていくことが重要。県大初のベンチャー企業として、県内の大学ベンチャー活動を引っ張っていってほしい。地域貢献はもちろんだが、グローバルな視点を持って挑戦してもらいたい」と激励した。
県内の高校で非常勤講師を務めた経験のある竹田さんは「技術を持つ岩手の学生と、岩手で働き、魅力のある仕事が岩手でもできることを広めたい。私たちの技術は何か新しいものを生み出すための力ではないが、必ず皆さんの役に立つものになると思う」と話す。近藤さんは「いろんな人に応援してもらい、一言『頑張ります』という気持ち。ICT技術の複雑さを解消して、便利で楽しい部分をたくさん皆さんに使ってもらいたい」と意気込んだ。