盛岡在住の脚本家・道又力(つとむ)さんによる、盛岡在住の高橋克彦さんの評伝「作家という生き方 評伝 高橋克彦」が4月16日、刊行された。
著者の道又さんは高橋さんの秘書を15年にわたって務め、2000(平成12)年には高橋さんの作家読本を出版している。その中には高橋さんが生まれてから作家になるまでを紹介した小伝を収録していた。その後、作家になって以降の内容を書き加えた、生まれてから現在までの評伝をいずれ書きたいという思いを持ち続けていた。
「執筆の背景にはコロナ禍の影響もある」と道又さん。感染症拡大防止などの観点から演劇公演の中止が相次ぎ、本業である脚本家としての依頼は激減。数カ月間、スケジュールが空く状況が続いた。道又さんは「この時間をどう使おうかと考えた時、長らく懸案になっていた高橋さんの評伝を書こうと思った。高橋さんは自分にとって物書きの師匠のような存在。いずれきちんとした伝記を書かなければとは思い続けてきた」と話す。
同書は全4章に分けて高橋さんが生まれてから現在までの歩みをまとめる。1章では高校卒業まで、2章は作家になるまで、3章・4章では作家になってからと直木賞の受賞以降について、5章は「あの日から」と題し、東日本大震災から現在に至るまでをまとめる。巻末には全著作を時系列で紹介する。
本文は高橋さんの小説やエッセーからを引用し、本人提供の秘蔵写真80枚と共につづられる。道又さんは「作品を紹介するなら、そこから文章を引用するのが分かりやすい。特にエッセーは本人の肉声に近い内容なので、それを挟み込むことで私の文章と対話をするような楽しみ方をしてもらえると思う」と話す。
今回の評伝について高橋さんからは「ここまで書かれるのは恥ずかしい」というコメントもあったという。道又さんは「どうしても紹介したいエピソードも多く、この本に高橋さんの人生の大事なポイントはほぼ入っていると思う。作品についても細かく書いたので文芸批評としての側面もある。高橋さんの作品をより楽しむ一助になれば」と呼び掛ける。
四六判、248ページ。価格は1,870円。