「喫茶月時計」(盛岡市紺屋町)で現在、家族写真や記念写真をテーマにした写真展「家族の風景」が開催されている。
写真展を企画したのは、市内で写真店「POND HOUSE」を営む齊藤宙(ひろし)さん。現在は出張撮影をメインにしているが、昨年は新型コロナウイルス感染症の影響を受けさてまざまな行事が中止になり記念撮影の依頼も減っていたという。この状況の中で感じていたのが、「日常の揺らぎやすさ」と「日常で写真を撮ることの大切さ」だった。
会場となる「喫茶月時計」では作家による作品展示が行われることもあり、齊藤さんも写真展を同店で開いている。同店の店主は大船渡出身。東日本大震災から10年を迎えることに合わせ、「3月に何かできないか」という話を聞き、齊藤さんが「家族写真をテーマにした展示はどうか」と提案した。
齊藤さんは「震災のような自然災害やコロナ禍の状況を経験して、一つの出来事で日常が大きく変わってしまうことを痛感した。会いたい人に会えない時、写真が1枚あるだけで気持ちが違ってくる。『また今度』と思っていても、その今度が二度と来ない時もある。だから今、写真を撮ることや写真を見ることの良さを感じてもらいたい」と話す。
写真展では「POND HOUSE」で撮影を行った県内在住の3組の家族・個人の協力を得て、3組が撮影してきた家族写真や記念写真と、家族写真・記念写真に対する思い、写真を残すことへの考えなどを文章にまとめて紹介する。展示する写真は「POND HOUSE」で撮影したもののほか、参加者らが個人的に残してきた思い出の写真。その写真に関するエピソードも合わせて冊子形式にまとめたものを来場者へ配布している。店内には店主が子どもの頃、1986(昭和61)年に撮影された沿岸地域の写真も並んでいる。
来店客からは「エピソードを知ってから写真を見ると、撮った人の思いを感じる」「じっくり見ていると涙が出そうになる」といった感想も寄せられる。齊藤さんは「参加者の皆さんが撮影した写真は、私たち写真家では絶対に撮れない良さがある。この展示が家族や身近な人を思う機会に、そして誰かと写真を撮るきっかけになればうれしい」と呼び掛ける。
営業時間は11時~16時。毎週月曜と第1・第3日曜定休。3月28日まで。