岩手県立博物館(盛岡市上田)で現在、テーマ展「いわての政治物語-幕末・明治・大正-」が開かれている。
岩手は4人の内閣総理大臣をはじめ、多くの政治家を輩出している。同テーマ展では、「なぜ岩手出身の政治家が多いのか」という点に迫り、県内の政治的関心につながる土壌について探り、全4章に渡る展示で「岩手の政治物語」として紹介していく。
第1章は近世最大の一揆とも評される「三閉伊一揆」について取り上げる。この章では「多くの人が政治に関わろうとした歴史を掴(つか)む」をテーマに、1847年と1853年に南部藩で起きた一揆に関する資料を並べる。一揆についての報告書や、農民たちが「困る」という意味を込めて掲げた「小○旗」の複製、1853年の一揆の指導者・三浦命助の獄中記などを展示する。
第2章では「奥羽越列藩同盟」として戦った「戊辰(ぼしん)戦争」、第3章は「自由民権運動」について紹介。第2章は文字資料に加え、五芒(ごぼう)星を描いた「奥羽越列藩同盟」の同盟旗や、戦いの様子を描いた図絵、敗戦の責任を取って処刑された盛岡藩家老・楢山佐渡が詠んだ句などが並ぶ。
第3章は盛岡の民権結社・求我社に関する資料を中心に、民権雑誌「東北新報」に掲載された風刺絵、自由民権家たちの名刺など東北での自由民権家たちの動きが分かる資料を展示。求我社に関するものは、指導者的役割を担った鈴木舎定(いえさだ)の書簡や肖像写真、舎定の没後に中核として活躍した伊東圭介へ宛てられた退去状も並び、特に退去状は伊東の名前が間違って「伊藤」と書かれていることから、当時の緊迫した様子が見て取れる。
第4章では「平民宰相」として慕われた原敬を取り上げる。今回は原敬のジャーナリストとしての側面にも着目。新聞社に勤めていた時代は政治に関する論文を多く書いていたといい、本人による記事の文稿も展示する。政治家時代の写真や書簡、辞令なども並び、当時の業績についても触れる。
展示の最後には日本や岩手の政治史、憲法や選挙の移り変わりについて紹介。政治史についての年表の中には災害や疫病に関する項目も加えている。
展示を担当した学芸員は「中学生や高校生にぜひ見てもらいたい展示」だと話す。「数々の歴史的な出来事を経て、岩手の人々が政治へ関心を高め参加していこうとした歩みが分かると思う。なぜこういうことをしたのかというポイントを押さえると、多くの人が声を上げて立ち上がった理由も見えてくる。この展示をきっかけに政治に興味を持つきっかけになれば」とも。
開館時間は9時30分~16時30分(入館は16時まで)。月曜、12月28日~1月4日・12日休館。入館料は一般=310円、学生=140円、高校生以下無料。2021年2月14日まで。