桜山神社(盛岡市内丸)で8月19日、国産の漆と漆染めマスクの奉納および新型コロナウイルス感染症早期終息祈願祭が行われた。
奉納を行ったのは、盛岡市内でウルシの植樹活動などに取り組む「次世代漆協会」と、漆器・漆製品の製造販売を行う「浄法寺漆産業」など、漆の生産・販売・普及に関わる4つの企業と団体。きっかけとなったのは、富山県での神社で新型コロナウイルス感染症の終息を祈願して漆を奉納する「漆祭り」が行われたことだった。国内一の漆産地である岩手県が感染者ゼロということにあやかって行われた背景もあり、「それでは岩手でも奉納しよう」という思いが生まれた。
今回は盛岡のほか、同日時で東京の浅草神社でも奉納を行い、感染者が少ない岩手と多い東京の2カ所から早期終息を願う。奉納先に選んだ桜山神社と浅草神社も共に漆に縁がある。桜山神社は盛岡藩の藩主・南部家にゆかりがあり、盛岡藩では漆の増産に取り組んでいたという。浅草神社の社殿は総漆塗りで、火災や地震、空襲などの被災を逃れ、国産漆で修理修復がされている。
桜山神社での奉納と祈願祭には「次世代漆協会」の代表・細越確太さん、「浄法寺漆産業」社長の松沢卓生さんをはじめ関係者10人ほどが参加。岩手で本年度採取した生漆と、ウルシの木を使って染めた「漆染めマスク」を奉納し、新型コロナウイルス感染症の早期終息を祈り、盛岡藩と漆のゆかりや感染症終息への思いを込めた祝詞がささげられた。
「漆染めマスク」は「浄法寺漆産業」が開発・販売を行うもので、漆の採取を終えた木を乾燥させてチップにしてから染色に使うため、肌がかぶれる成分は含まれていない。漆が持つ抗菌力を生かした製品で、7月の販売開始以来、好評を得ている。
松沢さんは「新型コロナウイルスが全国で猛威を振るう中、県外での漆製品の販売機会が失われている。同じように伝統的な産業に関わる皆さんにも影響が出ているという声も聞く。漆にあやかり、一日でも早く安心して暮らせる日が来ることを願う」と話した。
細越さんは「漆を通じてワクワクすることを提供したい思いで活動してきた。感染症の影響もあり、暗い話題が増えている中で少しでも明るい気持ちになるような取り組みを続けていきたい。改めて早期終息を祈るばかり」と話す。