岩手県は現在、動画配信サイト「ユーチューブ」の「岩手県公式動画チャンネル」で、家庭で取り組める運動プログラムを紹介する「レッツ!ぺっこトレ!!」を配信している。
動画を制作しているのは、県スポーツ振興課の職員ら。新型コロナウイルス感染症の影響を受け、同課で計画していた事業を実施できない状況が続いていた。加えて、同じく感染症の影響から家庭で過ごす時間が長くなった人が増えたことから、家庭でできる運動を動画で配信するアイデアが生まれた。
動画は職員らの手作り。紹介する運動の内容から、撮影、出演、編集までを職員の手で行っている。職員の中には体育教員や選手の育成に関わる人、スポーツ医・科学専門員など運動に精通した専門家がいるため、医科学的にも効果がある運動を考えた。アスリートや専門家が個人・チームで運動やトレーニングを紹介する動画は多いが、自治体が配信している例は少ないという。
編集を担当する高屋敷真悟さんは「運動を考えるのも、動画を作るのも初めて。方法も分からない中のスタートだった。感染症というネガティブなきっかけではあるが、情報発信のアイデアとしては良い経験ができた。今後も生かしていけるのではないか」と意気込む。
タイトルに使われている「ぺっこ」は、「少し」や「ちょっと」という意味の岩手の方言。「少しの時間で」「ちょっとの運動」という意味を込めた。動画は子どもたちや体力に自信がある人に向けた「挑戦編」、気分転換になるような手軽にできる運動を紹介する「リフレッシュ編」、日頃から運動をしている人や競技力向上を目指すアスリートに向け、新たな刺激になるような運動に取り組む「パワーアップ編」の3つのテーマで制作している。
動画を見た人が動きをまねするだけにならないよう、運動の特徴や効果、体を動かす時のポイントも解説。制作に関わる同課スポーツ医・科学専門員の高橋一男さんは「動画を見ながら一緒に真似してくださいというものは多くあるが、それだけでは正しく運動するのは難しい。しっかり解説を入れることで、効果的に運動してもらえるよう工夫した。内容の質に関しては高いと思う」と話す。
現在4本の動画が公開中で、職員に加えて岩手ゆかりのゲストも出演する回もある。第1回は達増拓也岩手県知事と岩手まるごとおもてなし隊が登場し、椅子に座りながらできるストレッチを紹介。第4回ではスキー競技アルペンの宮本慎矢選手が膝を立ててバランスを取るトレーニングに挑戦する。26日には最新動画の配信も予定している。
7月からは事業も再開予定。撮影済みの動画もあり、当面の間は週1本のペースで投稿を続けていくが、その後については検討中だという。同課特命課長の三ケ田礼一さんは「普段運動をしている人、していない人、高齢者、子どもたち、全ての人が見て挑戦できるように工夫している。簡単にできて、健康に過ごしてもらおうと思いを込めたので『ぺっこ』一緒に身体を動かして」と呼び掛ける。