「紙町銅版画工房」(盛岡市上ノ橋町)代表の岩渕俊彦さんが制作した「アマビエ」の消しゴムはんこが話題を呼んでいる。
「アマビエ」は、江戸時代に現在の熊本県に現れたといわれる妖怪。「アマビエ」は自分の姿を見た役人に「もし病気が流行した時には、自分の姿を映して人々に見せるように」と伝えたとされていることから、疫病を退ける存在として注目を集めている。SNSなどでは、「アマビエ」の姿を描いたり、立体作品を制作したりする「アマビエチャレンジ」も流行した。
岩渕さんも友人が「アマビエ」のイラストを描いているのを見て、その存在を知ったという。「なんだこれはと思って調べてみたら、流行している理由がよく分かった」と岩渕さん。自分も作ってみようと、「アマビエ」の出現を伝えた当時の瓦版に描かれていた姿をそのまま写し取り、消しゴムはんこを制作。「疫病退散」の文字を添えて紙に刷った。
制作したはんこと、それを刷ったものをツイッターに投稿したところ、大きな反響があった。紙に刷られた「アマビエ」がたくさん並ぶ画像には、2000を超える「いいね」が付き、「欲しい」「販売してほしい」という声も多く、これには岩渕さんも「初めての経験で驚いた」という。
紙に刷った「アマビエ」は知人などに配り、広く配布することや販売する予定は今のところない。「アマビエ」を受け取った人からは「何これ」と尋ねられることもあり、話のきっかけになっているという。
岩渕さんは「『アマビエ』は姿がかわいらしいので喜ばれるし、すでに存在を知っている人はうれしいと受け取ってくれる。新型コロナウイルスの話題は明るい話ではないが、『アマビエ』をきっかけに笑顔で話し合ったり、状況を確認し合ったりすることができているので、ありがたいとは思う」と話す。
4月18日からは岩渕さんがスタンプのデザインを担当している「もりおか中津川まち歩きスタンプラリー」もスタートする予定だったが、開催を延期。工房は対策を取りながら通常営業を続ける。入り口には手製の「壁新聞」を掲示し、手洗いや換気の実施、咳エチケットへの注意を発信している。
岩渕さんは「できることをしながら、何とか続けて行ければと思っている。緊張した状況が続く中で、『アマビエ』のはんこは少しゆるい話題かもしれないが、頑張っている皆さんに励ましや、ちょっとの笑いを届けられれば」と話す。