「コミック版 世界の伝記(44) 新渡戸稲造」が5月、「ポプラ社」(東京都)から発売された。
「コミック版 世界の伝記」は、時代ごとに輝いていた偉人をピックアップし、有名なエピソードを踏まえながら、その生涯を分かりやすく紹介する小学生向けの学習コミックシリーズ。今回ピックアップされた新渡戸稲造は、小学校の道徳の教科書で取り上げられている。学校の授業で初めて「新渡戸稲造」を知る子どもたちに向け、人物像や人生、功績を分かりやすく伝えようと企画された。
ポプラ社児童書事業局の担当者は「今から100年も前に日本人の考え方を世界へ紹介し、さらに国際連盟で世界平和のために活躍していた人物がいたことは、今の子どもたちにも驚きや感動を与えるだろうと思った」と話し、「時代の大きな転換期の中、自分の進む道を模索し、迷いながらも常に努力する稲造の姿は現代と変わりない。その中で、学生たちのため、日本のため、世界の平和のために、できることを精いっぱい頑張ってきた人生を見てもらいたい」とも。
同書では、盛岡の武士の家に生まれた新渡戸稲造が、国際人として活躍する生涯を漫画で紹介。写真や記事、年表などで補足情報を紹介するページも盛り込み、小学生が楽しく読める工夫がされている。
漫画は「コミック版 世界の伝記」シリーズも手掛ける文月鉄郎さん、監修は盛岡出身で「新渡戸稲造基金」の理事長や「新渡戸稲造会」の会長を務める藤井茂さんが担当する。監修担当者を探す中、藤井さんが新渡戸稲造にまつわる著書を多数出版していることや、多くの情報を持っていたことから、監修を依頼したという。
藤井さんは「新渡戸稲造は人生全般、生き方全部を示唆してくれた尊敬すべき存在。事実を間違えないように特に気を付けた」と話す。同書の中で気に入っているシーンは、国際連盟初代事務局次長の任期を終え帰国する新渡戸稲造に向けて、連盟職員が「パス・フレンド」という言葉を送る場面だという。「パス・フレンド」には、民族・宗教・言語などあらゆる垣根を越えた友人という意味がある。
藤井さんは子どもたちに向けて「このような伝記をたくさん読むことで、心を学んでほしい」と呼び掛ける。
126ページ。価格は1,026円。