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岩手の漆を日本酒で応援 盛岡の酒蔵が共同プロジェクト開始

支援者の手元に届く「膠漆の交わり」。熟成酒と漆器がセットになっている

支援者の手元に届く「膠漆の交わり」。熟成酒と漆器がセットになっている

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 「菊の司酒造」(盛岡市紺屋町)は現在、「浄法寺漆産業」とのコラボレーションプロジェクト「膠漆(こうしつ)の交わり」に取り組み、クラウドファンディングサイト「Makuake(まくあけ)」で支援を募っている。

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 プロジェクトは日本酒をオリジナルの漆器をセットで楽しんでもらうとともに、国産漆の植樹活動を支援するというもの。現在、国内で流通している漆は輸入品がほとんどで、国産漆の流通量は全体の約3%にとどまり、流通している国産漆のうち70%は岩手県産の漆だという。漆の木や職人の数が減る中、文化庁の指導により重要文化財の修復に国産漆が使われるようになったが、現在の生産体制では毎年2.2トンを必要とする需要についていけない現状もある。

 「菊の司酒造」専務の平井佑樹さんは1年ほど前に「浄法寺漆産業」代表の松沢卓生さんと出会い、国産漆が直面する危機的状況を知ったという。日本酒も漆も同じ日本の工芸であることから、「日本酒で何か支援ができないか」というアイデアでプロジェクトがスタートした。

 平井さんは「『膠漆の交わり』は固い結び付きを表す言葉。膠漆は膠(にかわ)と漆のことで、どちらも接着剤で使われ、簡単には離れない。漆を使った器は日本酒との相性も良く、膠と漆で塗り固めたような強い絆で互いの魅力を引き出し合える」と話し、「プロジェクトを通じてまずは国産漆の現状を知ってもらい、そして素晴らしさを感じてもらいたい」とも。

 今回のプロジェクトでは、大吟醸酒を瓶の中で低温熟成させた2012年度産のプレミアム熟成酒「膠漆の交わり」と、職人が全て手作業で仕上げたオリジナル平盃をセットで販売。熟成酒は上品で深みのある甘みと、カラメルやナッツのような香味が特徴。淡く色づいた酒の色を楽しんでもらおうと平盃(ひらはい)に使う漆は白漆を選び、大きさや口当たりにもこだわった。表面にははけ目を残すことで世界に1つしかない漆器の個性を楽しんでもらおうと工夫。白漆は漆液に白い顔料を混ぜて作るが、漆液の色が出るため真っ白にはならず一般的にはあまり使われていないという。酒の色と共に漆自体の色も感じてもらいたいという思いも込めた。

 クラウドファンディングでは返礼品として日本酒と漆器のセットのほか、日本酒のみや、漆の植樹活動を応援するコースも用意。秋ごろには一般発売も予定し、支援と売り上げの一部は漆の植樹活動などを行う「NPO法人ウルシネクスト」に寄付し、植樹活動に活用する。

 平井さんは「日本酒と漆だけではなく、プロジェクトを通じた人と人のつながりも膠漆の交わりだと思う。皆さんと一緒に日本独自のものを守り、伝えていきたい。日本酒と漆から、はるか昔から現代まで続く時の流れを感じて」と呼び掛ける。

 クラウドファンディングの支援は1口3,240円から。5月30日まで。

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