南部鉄器新ブランド「kanakeno」設立 長く日常に寄り添う「鉄瓶」広める

鉄器へアラレ模様を打つ作業。すべて職人の手で行う

鉄器へアラレ模様を打つ作業。すべて職人の手で行う

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 南部鉄器の製造・販売を行う「タヤマスタジオ」(盛岡市向中野7)は8月13日、新ブランド「kanakeno(カナケノ)」を立ち上げ、鉄瓶のインターネット販売を開始した。

鉄瓶「みぞれあられ」。使いやすさを重視し、軽く薄い作りになっている

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 同社長の田山貴紘さんの実家は「田山鐵瓶(てつびん)工房」(滝沢市大釜)。田山さんは東京で会社勤めをしていたが、南部鉄器職人の後継者不足や、鉄器を使う人が減っていることなどについて考えていたという。その後、東日本大震災をきっかけに岩手に戻り、2013年から職人として工房で鉄器作りを学び始め、同社を立ち上げた。ブランドを設立したのは、「鉄器を使ってもらうことを意識したブランドを作りたい」という思いがあったからだという。

 田山さんは「職人の仕事は鉄器を作り、使う人に売ることが中心。使ってもらうための手助けをする取り組みは少ないように感じていた。ライフスタイルの変化によって使い手が減ることで、後継者も減っているとも考えられる。鉄瓶が日常で使う道具であることを再認識してもらいたい」と話す。

 ブランド名の「kanakeno」は、鉄瓶などで湯を沸かした時に出る渋を指す「金気」が由来。金気やさびが生じ、手入れが面倒くさいという鉄器のネガティブなイメージを解消しようと、金気に助詞の「の」を付け、金気の価値やさびの意味を受け入れて、長く使ってきた証としてポジティブに捉えてもらいたいと願いを込めた。鉄瓶のある日常生活や使う場面などを提案しながら、商品展開や情報発信を行う。

 同ブランドでは、購入後のアフターケアやサポートに力を入れ、2回まで無料でさびや着色の直しを行うサポートや、手入れ方法や使い方の疑問にSNSを通じて答える「鉄瓶コンシェルジュ」といったサービスを実施する。

 13日に販売を開始した鉄瓶「みぞれあられ」(6万4,800円)は、小さなアラレ模様が不規則に並んだ模様が特徴。負担なく使ってもらうため重さを1.1キロほどに抑え、水を入れやすいようふたを大きくし、IHクッキングヒーターでも使用できるなど日常での使いやすさを重視した。販売数は初回限定20個となっている。今後、鉄瓶の種類も増やす予定。

 田山さんは「離れてしまった職人と使い手の心の距離をもう一度縮めて、使い手に寄り添いながら、一緒に鉄瓶がある暮らしを歩みたい。『鉄瓶を使ってみたいけど難しそう』と思う人に使ってほしい。私たちも皆さんに学びながら、鉄瓶の魅力を伝えていく」と呼び掛ける。

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