
岩手の裂き織とオーストラリアの靴職人がコラボレーションする国際共同研究プロジェクトの報告のため、プロジェクトの関係者らが9月24日に内館茂盛岡市長を表敬訪問した。
同プロジェクトは大阪・関西万博のEU館が文化交流の一環として展開するもの。欧州出身の5人のアーティストや職人などが、日本の職人などとコラボレーションし、全国各地に滞在しながら、欧州と日本の伝統技術と文化が融合した作品作りに取り組んでいる。
プロジェクトに参加するオーストリアの靴職人マティアス・ウィンクラーさんは、使い古したじゅうたんやレザーなどの素材をリサイクルして靴を製作し、普段から素材を無駄にしない方法を考えながら靴作りに取り組んでいるという。古くなった布を細かく裂いて織り込む「裂き織」に共感し、滝沢市で裂き織製品の企画開発・製造に取り組む「Saccora Share Globa」とのコラボレーションに至った。同社代表の石頭悦さんは、盛岡を拠点に障害のある人と一緒に裂き織製品の製作を行う「幸呼来(さっこら)Japan」を運営している。
24日には、マティアスさんと石頭さん、プロジェクトに関わる国際団体「KNOTTO(ノット)」のアンネリーン・ベルテルス理事長、ワルド・デ・ケースマイル副理事長が盛岡市役所を訪れ、プロジェクトの進捗状況や今後の展開などについて内館市長に報告した。
現在はマティアスさんが使っている素材と裂き織を組み合わせたアート作品の制作に取り組んでいる。今後、裂き織を組み合わせた靴作りに取り組む考えもあるという。
マティアスさんは「裂き織は古くなったものをリサイクルして長く使えるところが魅力的。日本の伝統である裂き織の素材と、自分が靴作りで使っている素材を組み合わせ、2つが融合した芸術を作る予定なので、石頭さんから裂き織を学び、日本とヨーロッパの文化が融合した作品作りを皆さんに見せたい」と意気込む。
石頭さんは「裂き織はまだ知名度が低い。このコラボレーションが、いろんな人に裂き織のことを知ってもらうきっかけになればうれしい」と話した。
内館市長は「盛岡で暮らす人には真面目で優しい人が多い。石頭さんもその一人で、熱い思いを持って、障害のある人が働く場とその人たちの幸せを作ってきた。盛岡の職人と裂き織を見つけてくれてありがとう」と伝えた。