
盛岡市出身の俳優・戸塚純貴さんと同市在住の作家・くどうれいんさんによるコラボレーション書籍「登場人物未満」が1月29日に、KADOKAWA(東京都千代田区)から発売された。
同書は、月刊誌「ダ・ヴィンチ」で2023年から約1年間連載された同タイトルの企画を書籍化したもの。東京都内や盛岡市内などで撮影された戸塚さんの写真を基に、くどうさんがさまざまな登場人物を想像してショートストーリーを執筆。2人で「この街のどこかにいるかもしれない人たち」の物語を描く。
市内での撮影は肴町商店街や開運橋付近の北上川沿い、コミュニティーFM局「ラヂオ・もりおか」のスタジオ、パルクアベニュー・カワトクの屋上などで行った。戸塚さんは「毎日通っていたような場所で撮影してもらうのは、ちょっと不思議な気分だったが、安心感はあった。くどうさんが想像力を膨らませられるように、私が1人で何かやっている姿を撮るコンセプトだったが、くどうさんには『どんな物語にすればいいんだろう』と場景ごと面白がってもらいたくて、企画段階からアイデアをたくさん出した」と振り返る。
写真から物語を創作する過程について「字数やテーマという制限の中でどれだけ表現できるかという点では、短歌や俳句に似ていた」とくどうさん。「私は小説を書く時に登場人物の外見まで細かく決めることはほとんどない。戸塚さんの姿が目の前にある状態からスタートするという試みは初めてで、プレッシャーを感じながら楽しくもあった」と話す。
同書には連載で掲載した15編のほか、書籍化のために撮り下ろした写真や、くどうさんによる書下ろしエッセー「戸塚さんを捕まえる」、戸塚さんが連載に影響を受けて書き始めたコラム「登場人物超過」などを収録する。執筆に挑戦した戸塚さんは「時間をかけて書き上げたものの、『これじゃない』と思うこともあった。締め切りが近づいているのに、なかなか原稿を送れないなんてことばかりだった」と話す。
くどうさんは「普段暮らしている風景が短編映画のように切り取られていることに感動したし、『私と戸塚さんが住む街、かっこいいじゃん』と思って、かっこよく物語を書いたつもり。エッセーでは盛岡の年上のお兄さんという戸塚さんの雰囲気が出ているので、岩手の皆さんに読んでもらいたい」と話す。戸塚さんは「くどうさんの書いた物語を通じて、『もしかしたらこんな人生もあったのかも』と想像した。色々な感覚がかみ合った気がしている。短編小説だと思って読んでみてもらえたら」と呼びかける。
四六判、160ページ。価格は1,870円。