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くどうれいんさんの5年ぶり食エッセー集 「特別じゃない」暮らしと食事つづる

「桃を煮るひと」表紙。桃のような手触りの紙が使われている

「桃を煮るひと」表紙。桃のような手触りの紙が使われている

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 盛岡在住の作家・くどうれいんさんによる食にまつわるエッセー集「桃を煮るひと」が6月14日、ミシマ社から刊行された。

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 くどうさんが食をメインテーマにしたエッセー集を出すのは、デビュー作「わたしを空腹にしないほうがいい(通称、空腹本)」以来、5年ぶりとなる。日本経済新聞の連載「プロムナード」に掲載された作品と、暮らしの手帖(てちょう)社「暮らしの手帖」2022年8・9月号に掲載された作品に書き下ろし14編を加えた全41編を収録する。

 この5年間、歌集や小説、絵本など幅広いジャンルに挑戦してきたくどうさん。食のエッセーを出さなかった理由には、知人からの「次も食べ物を書いたら一生食べ物を書かなきゃいけなくなるかもよ」というアドバイスや、「くどうれいんといえば空腹本」「くどうれいんといえば食べ物」というイメージの強さがあったという。

 くどうさんは「いつまでも『空腹本の人』のままでいたくなくて、食べ物以外の話も書きたかった。でも、食べ物の話が好きだから書きたいという気持ちもずっと抱えていた。そろそろ『くどうれいんといえば食べ物』というイメージも薄くなってきたのではないか、食のエッセーを書いてもいいんじゃないか、と思っていたらちょうど5年が過ぎていた」と話す。

 収録しているのは、くどうさんの暮らしとその場面にフィットした食べ物の話。自分で作った食事や外食、買った食べ物、贈り物など、さまざまな食を取り上げる。書き下ろした作品は、何気ない会話を切り取った3行ほどの短い話や本音を書いた長い話といった、文字数が決まっている連載などには向かないエピソードを選んだ。くどうさんは「5年間でいろんな経験をして、毎日3食食べて、その食事の数だけ記憶がある。まだまだ載せ切れない話がたくさん」と振り返る。

 作品を通して伝えたいのは「作家という仕事や、自分の存在が特別ではないこと」だという。「食について書くと美食家だと思われたり、作家という仕事が特別視されたりするのも悩みの種」とくどうさん。「エッセーは簡単に言えば日記。誰もが書いたことがあるもの。食べることも誰もが経験したことがある。私は食べるのが好きだけど、毎日特別なものを食べているわけでもないし、自炊をしない時だってある。仕事をして、家事をして、食べて、普通に暮らす一人の人間として書きたいという思いも込めた一冊。読み終えた読者の皆さんと一緒に『ああ、おいしかった』と笑い合いたい」とほほ笑む。

 四六判、136ページ。1,760円。全国の書店などで取り扱う。

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