
石川啄木と宮沢賢治の食事などをテーマにした企画展「啄木・賢治の食と酒」が現在、「もりおか啄木・賢治青春館」(盛岡市中ノ橋通1)で開催されている。
2024年度から同館を指定管理する「いわてアートサポートセンター」では、2階の展示室を活用した啄木と賢治に関する企画展の強化に取り組んでいる。今回は幅広い世代に親しみがある食事をテーマに、2人の作品や日記などに登場する食と酒のエピソードを取り上げ、2人の人柄や人生を分かりやすく伝える展示を企画した。
展示では、啄木と賢治が生きた明治時代の食文化や岩手・もりおかの食事事情について触れながら、2人の作品や日記、親しい人々との記録から食と酒にまつわるエピソードを紹介する。冒頭では日本と岩手の食文化の動きと2人の生涯を年表で解説。啄木と盛岡の変化、賢治と冷夏の岩手といった、2人が暮らした場所や年代による食べ物の違いにも触れる。
中盤では啄木と賢治の酒についてのエピソードを中心に紹介。啄木と酒の関係は深く、酒が登場する作品や日記に残る記録が多いこと、ビールを好んで飲んでいたことを取り上げる。一方の賢治にとって「一杯する」といえばサイダーを飲むこと、禁酒や密造酒問題に関心を持っていたこと、全く酒を飲まないわけではなく誰かをもてなす時には酒を飲んでいたことを紹介する。
終盤は2人が食べたものとそのエピソードについて紹介。啄木が友人と結成した「ビスケット会」とその時に食べたビスケット、東京で暮らしていた啄木の元に北海道時代の同僚から届いたバター、賢治が弟や友人らにごちそうした西洋料理、病に倒れた妹のトシに賢治が食べさせたアイスクリームなど、本人が好んで食べた物や、2人と関わる人と食のエピソードとそれにまつわる作品や日記からの抜粋を展示する。
いわてアートサポートセンターの担当者は「啄木の作品には西洋化が進む盛岡の街と豆銀糖や南部せんべいといった郷土菓子が登場し、賢治の作品には冷夏や冷害を思わせる内容と共に西洋料理などハイカラなものも出てくる。2人が食べたものや当時の食文化が創作にもつながっていたことが感じられる。食という身近なテーマを通じて、2人の生き方に親しみを持ってもらえれば」と話す。
開館時間は10時~17時30分(入館は17時まで)。入場無料。第2火曜休館。3月23日まで(2月9日と3月1日は閉場)。