企画展「おかし・いとおかし」が現在、岩手県立図書館(盛岡市盛岡駅西通1)で開かれている。
同館職員の「お菓子をテーマにした展示はこれまでやっていないのでは」という声から企画した同展。3章構成で、日本の菓子の歴史と岩手の菓子、岩手の先人にゆかりある菓子を173点の資料で紹介する。
1章では、日本の菓子の歴史の中で重要な点や面白いエピソードをピックアップして解説。「枕草子」に出てくる「けずり氷(ひ)」や、日本語をポルトガル語で説明した「日匍(にっぽ)辞書」に収められた菓子の名前を紹介するほか、戦後に発展した洋菓子についての本や家庭で菓子を作るためのレシピ本などを展示する。
岩手の菓子について取り上げる2章では、県内の図書館職員の協力を得て行った「お菓子アンケート」の回答を基に、県内各地域の郷土菓子と銘菓・土産菓子の中から人気が高かったものや地域性があるものを選んで紹介。岩手の菓子に関する本や雑誌のほか、岩手県菓子工業組合と県農林水産部農業技術普及課の協力の下、写真パネルも展示し、菓子の特徴や生まれた背景、同じ菓子でも地域によって呼び名が違うことなどを解説する。アンケートで集まった「図書館職員の推しお菓子」は、大きな地図にまとめて紹介している。
担当者の山本祥子さんは「岩手は地域によって食文化が多彩で、菓子も地域性が強い。仙台藩だった県南地域は『もち食』、寒さ厳しい県北は雑穀料理、県央ではコメや雑穀を粉にして練る『しとねもの』の文化が発達しているのが分かる。例えば盛岡でよく食べる『きりせんしょ』や『お茶餅』も、しとねものだ」と話す。
3章では、原敬、石川啄木、新渡戸稲造、宮沢賢治の3人にゆかりある菓子とそのエピソードを紹介する。山本さん一推しのエピソードは啄木が友人2人と結成した「ビスケット会」の話。1908(明治41)年の日記に、小樽の夜の波止場でビスケットをかじり「自然だ」と叫び、毎月15日には互いにどこにいても必ずビスケットを食べることにしようと約束したと記述があるという。
山本さんは「おいしそうだなという気持ちで準備を進めてきた。食欲の秋なので、この展示を見た後で『なんだかおなかすいたな、お菓子食べたいな』と思ってもらえたらうれしい」と呼びかける。
開館時間は9時~20時。10月14日まで(9月30日は休館)。