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岩手出身の柚月裕子さんがトークショー 故郷を舞台にほっとする物語を届ける

「風に立つ」が生まれるまでについて語る柚月さん

「風に立つ」が生まれるまでについて語る柚月さん

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 盛岡駅ビル「フェザン」(盛岡駅前通)本館1階フェザンパティオで2月17日、岩手県出身の小説家・柚月裕子さんによる小説「風に立つ」(中央公論新社)の刊行を記念したトークショーが開催された。

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 同作品は盛岡の南部鉄器工房を舞台にした家族小説。問題を起こし家庭裁判所に送られてきた少年を一定期間預かる制度「補導委託」の引き受けを申し出た父とその行動に戸惑う息子、補導委託でやってきた少年の3人が共に工房で働き、同じ家で暮らすうちに変化していく心模様や家族の交流を描く。

 会場には多くのファンが来場。トークショーの聞き手は主催する「さわや書店」の栗澤順一さんが務め、「風に立つ」が生まれるまでの創作秘話や、盛岡・岩手のことなどについて尋ねた。同作の刊行後、初めて盛岡を訪れたという柚月さん。「ふるさとに温かく迎えてもらい、皆さんに会えたことがとてもうれしい」と笑顔を見せた。トークショーの前には「さわや書店フェザン店」に立ち寄り、「生まれて初めて自分の本を購入している人を見た」とも。

 補導委託をテーマにしたことや、南部鉄器工房を舞台にしたことについて聞かれると、「南部鉄器工房を舞台にしたのは、私のアイデア」と答え、「補導委託をテーマにした作品もいつか書こうと考えていた。補導委託は家族経営の事業者が引き受けているケースもあり、南部鉄器の工房が舞台にぴったりだと思った」と話した。

 これまで警察小説や推理小説、ミステリー小説を手がけてきた柚月さんにとって、同作は初めての家族小説となる。柚月さんは「家族同士でもそれぞれ違う悩みや考え方を持っているけど、誰かのために何かしたい、誰かに幸せになってほしいという気持ちは変わらずにある。誰かを思って喜んだり、悲しんだり、ほっとしたりする繰り返しが続いていくのが親子関係、人間関係だと思う」と話す。

 「変わらないものといえば、雨風に負けずに、いつもどっしり構える岩手山」と柚月さん。小学生時代を盛岡で過ごした自身にとって、「盛岡、岩手が原風景」と話し、「執筆で悩んだ時に盛岡を訪れて、子どもの頃から変わらずにある風景に勇気をもらった。今回の作品は大きな事件を描いたものではなく、すれ違いで心にひびが入りもやもやを抱えた人たちが、そのひびを修復していく物語。読んでもらえたらほっとする気持ちになるはず」と会場のファンへ呼びかけた。

 「風に立つ」は四六判、416ページ。価格は1,980円。

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