盛岡市の景観重要建造物を改築した交流施設「紺屋町番屋」(盛岡市紺屋町)が10月1日、オリジナルのボトルインク「盛岡ノオトの夕ぐれ-茜(あかね)の空-」と「盛岡ノオトの夕ぐれ-藍の刻(とき)-」を発売した。
施設を運営する「ほっぷすてっぷ」の代表社員・岩渕公二さんは、盛岡の歴史ある街並みやレトロなものが注目されていることに着目。それらをさらに発信できる手段はないかと考えていたという。岩渕さんは「盛岡がニューヨーク・タイムズ紙の『2023年に訪れるべき52カ所』に選出された時も、大正時代の建築物が残る街並みが評価されていた。そのレトロな魅力や美しさを持ち帰ることができるアイテムがあればと思っていた」と話す。
商品を開発するヒントになったのが、詩人・立原道造の手記「盛岡ノオト」。立原は1938(昭和13)年の9月中旬から約1カ月盛岡に滞在し、その時の情景や心情を同作品につづっている。作品の中には「紺屋町番屋」のものとみられる火の見やぐらや紺屋町周辺の風景について書いている。
「道造さんが称賛した盛岡は、ニューヨーク・タイムズ紙で評価された点と同じで、昔から変わらない。道造さん感じた盛岡の魅力を発信したい」と岩渕さん。「紺屋町番屋」のパンフレットの表紙には「盛岡ノオト」から抜粋した「夕ぐれ 火の見櫓(やぐら)に火がともる 僕の心は それを見ている」という一文が添えられている。この一文や、同作品に出てくる夕空の美しい表現に着想を得て、盛岡の夕空をインクで表現することを思い付いた。近年、万年筆やガラスペン、ご当地インクの人気が高まっていることもきっかけになった。
商品は、夕暮れの空の色の変化をイメージしたオリジナルの2色を開発。紺屋町という地名が、染め物屋が多く集まっていたことに由来していることから、染め物のあかね色と藍色で表現した。箱やラベルは活版印刷風のレトロな雰囲気に仕上げ、箱には立原道造と盛岡ノオトの紹介も添えた。
インクは立原が盛岡を訪れた時期に合わせて発売しようと春から準備を進めてきた。この時期に合わせて盛岡を訪れる立原のファンも多いという。岩渕さんは「あかね色は番屋の屋根の色にも似ているし、レトロさが建物の歴史とマッチする商品になった。道造さんが美しいと感じた盛岡の色を持ち帰ってもらいたい」と呼びかける。
価格は各色3,500円。紺屋町番屋のショップで取り扱う。営業時間は10時~17時。月曜定休。