もりおか歴史文化館(盛岡市内丸)で現在、企画展「罪と罰-犯罪記録に見る江戸時代の盛岡-」が開かれている。
江戸時代の盛岡藩で起きた犯罪の記録と処罰の内容などを紹介する同展。最初は小規模なテーマ展として2020年に始まり、来館者からの好評を受けて2021年、2022年と継続してきた。担当学芸員の福島茜さんは「文章が多く、じっくり読み込む内容なので、正直、これほど好評になるとは思わなかった。2年目くらいから最終的には企画展に昇格させたいと考えてきた」と話す。
テーマ展は展示できる資料が限られることから、あまりにも凄惨(せいさん)な事件は避けていたという。企画展に拡大したことで資料数が増え、凄惨な事件や悲しい事件、処刑の方法などについても取り上げることにした。展示室の入り口には「凄惨な事件や残酷な処刑に関する記述がある」と来館者へ伝える注意書きも設置している。
今回は盛岡藩の家老による政務日記「盛岡藩家老雑書」と、盛岡藩内で起きた犯罪とその処罰を記録した「刑罰」「諸刑罰」を中心に展示し、38件の事件を取り上げる。事件は「毒」「酒」「乱心」「盗人」といったジャンルごとに紹介。「蕎麦(そば)はっと殺人事件」や「『何となく面白くなって』家が全焼」など、テーマ展で取り上げた事件もある。
「処罰の内容に注目すると、江戸と現代との罪と罰に対する考え方の違いが分かりやすい」と福島さん。母と弟が毒を入れた鰯(いわし)汁で兄を毒殺した「鰯汁殺人事件」では、殺人を計画し実行した母よりも、毒を入手しただけの弟の処罰が重くなった。これは、兄や姉など年長の親族を殺害することはそれ以外の殺人より重罪だと定められていたためだという。酒に酔った武士2人が刀を抜いて暴れた事件は「事件を起こしたのにその記憶が全くない」という点が罪に問われたが、酒に酔っていたため減刑されている。
現代的な事件として福島さんは「公文書の転売」事件に注目。盛岡藩の公文書を盗んだ人物が、ろうそく屋や表具師に古紙として販売した事件で、その枚数は約8000枚。転売先から、公文書はろうそくの芯や掛け軸の裏打ち紙として再利用されたことも分かる。福島さんは「学芸員が欲しいと思っていた貴重な資料が、もしかしたら転売されてろうそくの芯として燃えてしまったと考えると、『こいつめ』と思ってしまう。今探している盛岡城に関する資料も転売されているかも」と笑う。
展示の後半では関連資料として町奉行の仕事や法令、処刑の方法などに関する内容を取り上げる。福島さんは「江戸時代の判決や処罰は厳しく、現代からすると理不尽な点もあるが、減刑の基準に意外と人情味が見える。例えば被害者側の申し出で処罰が軽くなることや、おめでたい日だからと減刑することもある。ここで紹介する罪と罰は全て事実。現代との共通点や違いを見つけながら、江戸の人が生きていた記録を知って」と話す。
開館時間は9時~19時(入場受け付けは18時30分まで)。入場料は、一般=300円、高校生=200円、小中学生=100円。盛岡市内在住・就学の65歳以上と小・中学生は無料。10月31日まで。