自動販売機の設置・管理などを行う「みちのくカスタマーサービス」(矢巾町)と、建設・不動産事業を手がける「タカヤ」(盛岡市本宮5)、東北銀行(内丸)の3者が共同で企画した無人販売施設「orka'tta(オルカッタ)自販機ステーション」(長田町)が4月28日に開業した。
同施設があるのは、タカヤが所有する賃貸マンションの1階部分。3年ほど空き店舗になっていたところに新型コロナ禍が重なり、新規の出店は難しい状況が続いていたという。そこで出てきたアイデアの一つが、岩手県内でも増えつつあった自動販売機による無人販売。きっかけとなったのは、マンションがある長田町周辺で買い物できる場所の選択肢が少ないことだったという。
タカヤの担当者・佐々木裕一さんは「この辺りはコンビニやスーパーマーケットが数店舗あるが、少し距離があったり、時間帯によっては混雑していたりして、利用しづらい環境でもある。気軽に買い物できる場所が増えればと考えた」と話す。
施設は企画に賛同した東北銀行とみちのくカスタマーサービスを加え、3者が連携することで実現。みちのくカスタマーサービスが中心となり出店者を探した。地域住民や周辺で働く人から意見を集め、市場調査も実施。需要に合わせながら、個性を出すことに重点を置いた。
現在出店・販売しているのは、チーズケーキハウスチロルのチーズケーキ、ケーキ工房モダンタイムスのヨーグルト、初駒のぽんぽこ餃子(ギョーザ)、中川石油の牛タン、一般社団法人思惟(しい)の風の道の駅たのはたオリジナル商品、夢コーポレーションのジェラートの県内6事業者。商品のPRや販路拡大、テストマーケティングを兼ねて出店している事業者もいるという。
地域住民から好評を得ているだけではなく、偶然通りがかって立ち寄る人、口コミを聞いて訪れる人も多い。周辺でイベントが行われた時には商品補充が間に合わないこともあるという。24時間利用できることから、早朝や夜間に買い物する人も少なくない。「自分も夜遅くに甘いものが食べたくなる時があるので気持ちは分かる。そういった部分の需要も満たせているならうれしい」と佐々木さんは笑う。
施設名の「orka'tta」は、スウェーデン語で元気になるという意味の「orka(オルカ)」、食べるという意味の「ata(アタ)」、発見するという意味の「hitt(ヒッタ)」を組み合わせた造語。「この場所が元気の源となり、地域の魅力の再発見につながるように」と思いを込めた。みちのくカスタマーサービスの担当者・伊藤佳数さんは「ここを利用した人が次は実際の店舗に足を運ぶというような、人が循環する仕組みをつくって、地域貢献にもつなげたい」と意気込む。