盛岡市在住の菅原初代さんによるコレクション展「願わくば、手のひらいっぱいの」が2月6日、「彩画堂(さいがどう)S-SPACE」(盛岡市材木町)で始まった。
菅原さんのコレクションの一部。手前には菅原さんが撮影した写真も
「大食いの魔女」としても知られる菅原さん。2016(平成28)年には市内の自宅を改装しパン店「カンパーニュ」を開き、地元住民など多くのファンに愛されてきた。店を開いたのも趣味のパン作りがきっかけだったが、芸術鑑賞と美術品の収集も趣味の一つだという。岩手県立美術館の解説ボランティアに参加したり、ギャラリーや美術館を巡ったりしながら、さまざまな作品に触れ、気に入ったものを手元に集めてきた。
菅原さんは昨年6月、ステージ4の大腸がんであると診断を受けた。現在は店を閉めて治療に専念している。その中で気がかりだったのは、これまで集めた美術品の今後について。「いつか私がいなくなった時に作品がばらばらになって、もしかしたら廃棄されるかもしれないと思って」と菅原さん。「そうなる前に作品を愛してくれる人へ託したい。次の居場所をつくりたいと考えていた」と話す。
思い立った菅原さんは交流のある作家らに相談し、収集した作品を展示販売するコレクション展を開くこととした。会場はギャラリーを併設する画材店「アートショップ彩画堂」に決め、同店スタッフや作家らの協力の下、1月下旬から急ピッチで準備が進み2月の開催にこぎ着けた。協力する作家の一人、柴田有理(あり)さんは「菅原さんは私たち作家にとって励みになる存在。どの作品に対しても愛情があり、芸術を楽しんでいるのがいつも伝わってくる」と笑顔を見せる。
今回は菅原さんのコレクションの中から25人の作家による51点を展示。ほとんどは岩手や盛岡に縁ある作家の作品で、絵画や銅版画、立体など幅広いジャンルの作品が並ぶ。菅原さんは「盛岡にはたくさんギャラリーがあるので、自然と岩手・盛岡に縁のある人の作品が集まってきたのだと思う。最初に目に入って『あっ』と思った作品を手元に置くことが多い。作家の皆さんは純粋で情熱的。ギャラリーで直接話を聞くのも楽しくて大好き」と話す。
会場には次々と来場者が訪れ、菅原さんに声をかける。美術仲間や店の常連客も足を運び、来場者から「すてきな作品ばかり」「これはお店に飾ってあった」などと話しかけられると、菅原さんは穏やかに作品を見つめ、魅力を語った。
初日から多くの作品に次の居場所が決まっている。菅原さんは「美術品を買うことがもう少し身近になればという思いもある。暮らしの中に芸術があると気持ちが明るくなる。作品について一緒におしゃべりしたい。次の持ち主へ作品と一緒に私の思いも伝わるとうれしい」と期待を込める。
時間は10時30分~18時(最終日は17時まで)。日曜定休。今月17日まで。