もりおか歴史文化館(盛岡市内丸)で現在、テーマ展「干支(えと)コレクション -ゆく寅(とら)・くる卯(う)-」が開催されている。
同館が収蔵する資料の中から、その年の干支に関するものを展示する同展。これまでは常設展示室の一角を使って行ってきたが、学芸員らの「テーマ展として大きく取り上げてもいいのではないか」という考えから、今年からテーマ展示室での開催となった。
今回は2022年の干支「寅」と2023年の干支「卯」の両方にまつわる資料をピックアップし、「干支コレクション」として約20点を展示。トラに関する資料は、盛岡にトラがいたという記録についての資料を中心に、昨年の干支関連展示でも紹介したものを並べて改めて振り返る。
新しい干支にまつわる資料は毎年担当学芸員が中心となって探すという。今回の担当学芸員・熊谷博史さんは「ウサギは昔話や絵画の題材にもなっていて、江戸時代よりも前から身近な動物であったことが分かる。私たち学芸員が悩みながら選んだものを楽しんでもらいたい」と話す。
ウサギに関する資料で学芸員一押しのものが、能面を保護するための「面衣(めんごろも)」。展示する面衣は、4代盛岡藩主・南部重信が作った能面「白露」に付属しているもの。盛岡城内の蔵に納められた能面について書き上げた「御能面目録」には面衣の素材などの情報が書き込まれてあり、白露の面衣の内側にウサギの毛を使っていることが記されている。
このほか、1月1日に「ウサギのタタキ」という料理を食べる習慣があったことが書かれた「南部藩諸礼式法」や、卯年の守り本尊「文殊菩薩(ぼさつ)」を描いた絵画、ウサギの絵が描いてある「絵銭(えぜに)」などの資料が並ぶ。それぞれの干支生まれの盛岡藩主も紹介し、卯年生まれの藩主は16代・南部利恭(としゆき)が取り上げられている。
「江戸時代から月とウサギは定番のモチーフであることもよく分かる」と熊谷さん。展示資料の一つ、江戸時代の百科辞典「和漢三才図会」の「月」の項目には、月で餅をつくウサギの挿絵が描かれている。
熊谷さんは「さまざまな資料を通じて、昔を生きていた人にとってウサギという動物がどういう存在だったのか、考え方や見方といった感覚が伝わってくると思う。盛岡藩と関わりの深いウサギについての資料にも注目してもらえれば」と呼びかける。
開館時間は9時~18時(入場受け付けは17時30分まで)。観覧料は一般=300円、高校生=200円、小中学生=100円。2月20日まで。