もりおか歴史文化館(盛岡市内丸)で現在、企画展「宝裕館(ほうゆうかん)コレクション寄贈40周年記念展 裕(ゆた)かなる宝」が開催されている。
「宝裕館コレクション」は、約100点の美術工芸品からなる作品群。1982(昭和57)年に盛岡在住の金沢裕臣さんから盛岡市へと寄贈され、同館と原敬記念館に分割収蔵されている。作品を収集したのは裕臣さんの祖父・友次郎さんと父・重雄さん。コレクションは旧盛岡藩南部家旧蔵の品をはじめ、盛岡にとって重要な作品を多く含み、郷土の優れた作品を地元に残すために収集したという。コレクションを受け継いだ裕臣さんは「より広く多くの人の目を楽しませられるように」と市へ寄贈した。
寄贈時に付けられたコレクション名は商家であった金沢家の屋号「寳田屋(たからだや)」の「寶(宝)」と、裕臣さんの名前から「裕」を合わせて名付けられたもの。「裕」は「ゆたか」と読めることから、企画展のタイトルを決めた。同展では、コレクションの一部と関連資料合わせて61点を、前期・後期で資料を入れ替えながら企画展示室と常設展示室で紹介する。
担当学芸員の福島茜さんは「コレクションの中には常設展に並べているものもあり、見たことがあるという人も多いかもしれない。単品として常設展で紹介するのと、コレクションという群れの一部として紹介するのでは違った見方ができると思う。どういう経緯でここに収蔵されたのか、なぜ市に寄贈されたのか、金沢家の皆さんの思いを知ってもらいたい」と話す。
展示資料はコレクションの中から盛岡・岩手・東北にゆかりのあるものをピックアップ。中には初めて展示するものや、10年ぶりに展示する資料もある。江戸時代を中心とした盛岡・旧盛岡藩領・盛岡藩主南部家に関連した資料を展示している同館では、特に近代の絵画や書の展示機会はごく少ない。今回の展示品の中では、盛岡出身の画家・藤島静村や秋田出身の画家・寺崎広業の作品はなかなか展示できないという。
「今回は純粋に美術品を楽しんでもらえる企画展。南部家や盛岡藩に興味がないという皆さんにも見てもらいたい」と福島さん。「重雄さんは収集した美術品について、公の遺産であると表現している。企画展のタイトルにも使っている『ゆたか』という言葉は、コレクションのジャンルの幅としての豊かさ、コレクションを手放すことなく収集し、公のために寄贈した金沢家三代の豊かな心も表している。『ゆたか』な美術工芸品の数々をじっくり楽しんで」と呼びかける。
開館時間は9時~18時(受け付けは17時30分まで)。入場料は一般=300円、高校生=200円、小中学生=100円。前期展示は来年1月16日まで、後期展示は1月18日~2月20日。