自家焙煎(ばいせん)コーヒー豆の販売やイベント出店、製品開発などを手がける「nomos(ノモス)」(滝沢市)が現在、盛岡市内の畑でヘーゼルナッツの栽培に取り組んでいる。
コロナ禍の影響を受けて一時的に休止してきたコーヒー販売の再開を考えていた同社。代表の内澤啓太さんは「コーヒーと一緒に提供できるものはないか」と調べていたという。その中で、長野市でヘーゼルナッツの栽培が行われていることを知った。「単純かもしれないが、ナッツはコーヒーに合うし、岩手でも育てることができないかと思ったのがきっかけ」と内澤さん。調べるうちに昭和30年代に岩手県林業技術センターでヘーゼルナッツ栽培の研究を行っていた資料を見つけた。
見つけた研究資料を基に、内澤さんは「ヘーゼルナッツを新たな岩手の特産品にできないか」と2021年に試験栽培を開始。長野市の栽培農家に相談しながら苗木を10本購入し、岩手の環境に適応できるか、特に冬を越せるのかを確認。無事に冬を越したことから今年4月に本格的な栽培を始めた。
内澤さんは「ヘーゼルナッツの和名はセイヨウハシバミ。ハシバミは岩手でも自生している身近な植物でもあり、ヘーゼルナッツの産地と知られるトルコやイタリアは日本と同じような緯度にある。その点からも環境が合っているのかもしれない」と話す。
農業も初挑戦の内澤さん。知人から農地を借り、岩手県林業技術センターや岩手大学寒冷フィールドサイエンスセンターから助言をもらいながら現在は7種100本のヘーゼルナッツを育てている。近隣で農業をしている人が様子を見に来ることもあり、内澤さんは「この辺りでは栽培例がない作物なので興味を持ってくれる人も多い。見守られながら生き生きと栽培できている」とも。
苗木は順調に成長中。成木になるまでは5~10年ほどかかるが、3年目からは実の収穫が可能となり、来年にはいくつか収穫できる見込み。来年度も苗木を増やし、今後は栽培に関するデータを蓄積して、栽培の普及も進める。収穫量が増えれば、さまざまな加工品への応用もしていく予定。
内澤さんは「若い木の時にはある程度の世話が必要になるが、基本的には消毒や農薬、水やりの必要がなく手間がかからないのもヘーゼルナッツの特徴。盛岡で育ったヘーゼルナッツが少しずつ世に広まって、栽培する人が増えていき、岩手の新しい名物になれば」と意気込む。