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「教科書から見る石川啄木」をテーマに企画展 公募で集まった教科書も展示

昭和から令和までの国語の教科書が並ぶコーナー。ほとんどは公募によって寄贈された

昭和から令和までの国語の教科書が並ぶコーナー。ほとんどは公募によって寄贈された

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 石川啄木記念館(盛岡市渋民)で現在、第17回企画展「教科書の中の啄木」が開かれている。

持ち主の書き込みがされている「皇國女子國文撰」

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 国語の教科書に掲載された短歌などから、啄木作品がいつごろから教科書に採用され、どのような作品が選ばれているかを紹介し、その魅力を取り上げる同展。展示を担当する学芸員の藤田麗さんは「多くの人にとって、啄木作品との出合いは国語の教科書だったのではないか?と思い付いたことがきっかけ。啄木作品がいつから教科書に載っているのか分かったらそれも面白いと考えていた」と話す。

 展示の最初では近代短歌の誕生について触れ、その後、近代短歌歌人として教科書に登場する啄木と作品を、さまざまな年代の教科書などの約40点の資料と共に取り上げる。

 先行研究により、啄木の短歌が旧制中学校の国語教科書に初めて掲載されたのは1914(大正3)年であることが確認されている。採用されたのは歌集「一握の砂」に収録されている「汽車の窓 はるかに北にふるさとの山見え来れば 襟を正すも」。啄木が亡くなってから2年後、歌集が出版されてから4年後のことだった。

 同展では戦前期の旧制高等学校・中学校向け教科書14冊と、現代の小学校~高校の教科書53冊を調査し、掲載が多い短歌をランキング形式で紹介。戦前期の1位は初めて掲載されたものと同じく「汽車の窓~」、現代の1位は「不来方の お城の草に寝ころびて 空に吸はれし 十五の心」だった。

 藤田さんは「例えば、戦前期で3位の『ふるさとの訛(なまり)なつかし 停車場の人ごみの中に そを聴きにゆく』は、現代だと5位。戦前では望郷や家族を題材にした短歌が多く選ばれているが、現代だと勉強する世代が共感しやすいものや、リズムを重視したものが選ばれている傾向がある。採用されている短歌だけで時代の移り変わりが分かると思う」と話す。

 展示されている教科書の中の一冊、「皇國女子國文撰(こうこくじょしこくぶんせん)」は日清紡績(現・日清紡ホールディングス)に付属する女学校で使われていたもので、掲載されている啄木短歌の周りに、持ち主がほかの歌を書き込んでいるのが分かる。「なぜ書き込みをしたのか、いろんな想像ができる。啄木の歌で故郷を懐かしんでいたのかも」と藤田さん。

 現代の教科書として展示されている教科書のほとんどは公募により寄贈されたもので、出版社の協力もあり集まった。藤田さんは「戦前から現代まで啄木の短歌がたくさんの教科書に採用されているということは、それだけ魅力があるということだと思う。教科書で啄木に出合って、大人になってから作品に触れると違った受け止め方ができるので、展示と共に作品を楽しんで」と呼びかける。

 開館時間は9時~17時(入館は16時30分まで)。入館料は一般=300円、高校生=200円、小・中学生=100円。来年1月22日まで。

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